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東京都・学校図書館の民間委託を廃止させた都議に聞く(1)…業務委託推進の波を覆せた理由

文=日向咲嗣/ジャーナリスト

“完成品を納入する”業務委託は、労働者派遣事業と違って、委託スタッフにクライアントが直接、指示・命令を出すことは堅く禁じられている。無許可で人を派遣して利益を得る“ピンハネ”行為にあたるからだ。現場への指示・命令は、本社の業務責任者を通して行わないといけない。工事を例にとると、発注者が直接、指示・命令を出せるのは、下請け企業の現場監督に対してだけだ。作業員とは、常に現場監督を通してやりとりをしなければならない。

 ところが学校図書館のなかでは、日常的に教師との打ち合わせは避けらない。その点で現場への周知が十分でなかったためか、都立高校の一校で「請負」に偽装した無許可派遣があったとして、15年7月に東京労働局から是正指導を受けたのだった。

 また、委託会社が契約通りに司書を配置できない契約不履行も頻発した。受託企業の大半は、ビル管理や清掃業、害虫駆除業など、図書館業務どころか教育とも無縁の企業。公務の民間委託市場が年々拡大していくなかで、都の業務を数多く受託していた業者が学校図書館の分野にも進出してきていた。

 信じられない話だが、3月に落札してから、4月以降に勤務する司書を募集する泥縄方式。しかも、募集はほぼ最低賃金レベルで1年ごとの契約というのでは、短期間で司書を確保するのは至難の業といえる。そのため、落札したものの契約通りに司書を高校に派遣できない契約不履行を引き起こす業者が続出したのだった。

 16年頃までこうした不祥事が頻発していたが、その後、都教委は単年度契約から複数年度契約に変更したり、業務完了した分だけ報酬を払う単価契約に切り替えたり、仕様書も違法状態に陥らないように改定し、各校にも詳細な通達を出すなどして、なんとか正常化させたかのように思われていた。

 一方で、この間に委託費は年々アップして開始当初の2倍近くになったが、業者が雇用する司書の時給は最低賃金プラス数十円のまま。「遅い、高い、悪い」の三拍子が揃った民間委託は、いったいなんのためにあるのかと、当サイトでは、これまで何度か報じてきた。

 事態が急変したのは昨年9月のことだ。米川都議が都議会の一般質問でこの問題を詳しく取り上げ、「いまだに偽装請負の状態にある」可能性を指摘したのだ。

 当日の質問内容だけ見ると「業務委託化を見直すべき」と、当たり障りのない表現に終始しているが、実はその議会質問当日までには、都財務局と都教委に対して違法事実を突きつけた厳しい交渉プロセスがあったことがわかった。

 さらに、9月の議会質問後も、どのように改善するのかの着地点についての綱引きは続けられていたのだった。都教委は一部の契約を停止するだけでお茶を濁すのではないかとみられていたなかで急転直下、「委託全面廃止」決定が出された。この20年ほど、日本全国で続いてきた公務の民間委託拡大の流れの中で、ひときわ異彩を放つ出来事となったのである。ほかの自治体へも少なからぬ影響を与えそうだ。

 次回から2回に分けて、米川都議へのインタビューを紹介する。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

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17:30更新
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