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菅原・前経産相からカニやメロンの寄付を受け取った有権者側は公選法で何のお咎めもないのか?

文=明石昇二郎/ルポライター
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 そして6月3日、衆議院本会議で菅原氏の議員辞職が全会一致で認められた。菅原氏はこの日、本会議の場に姿を見せることはなかった。菅原氏は同日、またしてもフェイスブックで、支持者にお詫びと感謝の念を伝えていた。ボーナスの件については、

「なお、期末手当について総務省と衆議院の議員課に確認したところ、やはり国庫への返納は不可とのことです。全額、被災地へお送りさせていただきます」

と報告。ただ、「やはり国庫への返納は不可」の「やはり」は余計だと思う。返上できないと予めわかっていた上でのポーズと受け取られる恐れがあるからだ。それでも、菅原氏がした投稿のコメント欄には「捲土重来」「尺蠖の屈するは…」「さらなるご活躍を」「今度の総選挙で審判を扇(ママ)げば良い」といった、菅原氏の再起を願う応援メッセージが連なっていた。

 公判が開かれることがない略式起訴の手続きは、容疑者自身が罪を認めることが前提とされる。そのため、検察が裁判所に要求する刑罰がそのまま適用されるのが常だ。前述したとおり、選挙区内での寄付行為を禁止している公選法違反行為は、罰金刑の他、公民権が最大で5年間停止され、その間は衆院選に限らず、すべての選挙に立候補できなくなる。つまり、今年の10月までに行なわれる予定の総選挙に、菅原氏は東京9区はおろか、どこの選挙区からも出馬できない。

 ただし、情状酌量の余地がある。菅原氏には、公民権停止の期間を減らしてもらう道が残されているのだ。過去にあった同様の事件では、自ら国会議員を辞職したことで、公民権停止の期間が3年間に短縮された例も実際にある。刑罰が確定した後に自動的に失職する場合、情状酌量はされないものの、その前に自ら議員辞職した場合は「情状」として、検察や裁判官から“情け”をかけてもらえるのだ。公民権停止の期間が3年間に短縮されれば、今年秋の総選挙はダメでも、その次には出馬できる可能性が出てくるわけである。しかし、公民権停止の期間が5年間であれば、次の次の総選挙にも出られない。衆院議員の任期は4年だからだ。

 菅原氏が自ら議員辞職する道を選んだのは、次々回の総選挙であれば再び当選できると確信しているからなのだろう。衆議院東京9区の有権者も舐められたものである。そして6月8日、東京地検特捜部は菅原氏を公選法違反の罪で略式起訴した。この先、公民権停止の期間を決めるのは、東京簡易裁判所である。果たして東京簡裁は、どのような判断を下すのだろうか。

メロンやカニやカネをもらった有権者は罰せられないのか?

 公選法ではそもそも、寄付した者だけでなく、有権者が寄付をもらうこともいけないこととされている。

公職選挙法 

第200条2 何人も、選挙に関し、第199条に規定する者(筆者注・国会議員や地方議会議員など)から寄附を受けてはならない。

 では、寄付をもらった有権者は罰せられるのか。東京都の選挙管理委員会に聞くと、

「公選法第200条の2項に『何人も、選挙に関し、第199条に規定する者から寄附を受けてはならない』とありますが、これに関する罰則は特に設けられておりません。有権者の側から強引に寄付を迫るなど、悪質なケースは別ですが」

とのことだった。ともあれ、菅原氏は寄付をした罪を認めて議員辞職し、態度で反省を示した。しかし、寄付をもらった側には何の罰則もないので、東京9区の有権者は、きっといつまでも反省しないのだろう。せめて菅原氏のように、反省の念を態度で示すことはできないものか。次々回の総選挙で返り咲きを目指す菅原氏の7選を阻むことで、反省を示せばいいのだろうか。

 当たり前の話だが、受け取る奴がいるから、配る奴もいるのである。もはや、ハシタガネであろうがなかろうが、寄付を要求したかしないかに関わらず、有権者が候補者から寄付や物品をもらったら即アウトとなるように、公選法第200条2項に罰則を設ける法改正をする必要がある――と思うのは、筆者だけではあるまい。

(文=明石昇二郎/ルポライター)

●明石昇二郎/ルポライター、ルポルタージュ研究所代表

1985年東洋大学社会学部応用社会学科マスコミ学専攻卒業。

1987年『朝日ジャーナル』に青森県六ヶ所村の「核燃料サイクル基地」計画を巡るルポを発表し、ルポライターとしてデビュー。その後、『技術と人間』『フライデー』『週刊プレイボーイ』『週刊現代』『サンデー毎日』『週刊金曜日』『週刊朝日』『世界』などで執筆活動。

ルポの対象とするテーマは、原子力発電、食品公害、著作権など多岐にわたる。築地市場や津軽海峡のマグロにも詳しい。

フリーのテレビディレクターとしても活動し、1994年日本テレビ・ニュースプラス1特集「ニッポン紛争地図」で民放連盟賞受賞。

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