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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

有村藍里が公表して注目「皮膚むしり症」、実は意外と多い?受診すべきは皮膚科?精神科?

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
有村藍里が公表して注目「皮膚むしり症」、実は意外と多い?受診すべきは皮膚科?精神科?の画像1
「Getty Images」より

 タレントの有村藍里がツイッターで、自らのささくれをむしり取る癖がやめられない「皮膚むしり症」であることを公表し、大きな反響を呼んだ。

「昔から指先のささくれをむしり取る癖があって、常に炎症起こして赤く腫れてました。自分でケアして少しずつ状態は良くなってきたけれど、あまり人に見せたくない部分。親指なんていつもボロボロ。だけどサロンでネイルケアしてもらった爪がピカピカしているのが嬉しくて、嫌いな指先をずっと眺めてる」

 この投稿に多くの共感の声が寄せられ、皮膚むしり症に悩む人が多いことが判明した。しかしながら、皮膚むしり症という言葉は、ほとんど世間に認知されていないのが現状であり、本当にそういった病名があるのかすらも定かではない。予防医療研究協会理事長で麹町皮ふ科・形成外科クリニック院長の苅部淳医師は、皮膚むしり症により皮膚炎を起こす患者は少なくないと話す。

「皮膚むしり症とは、自分ではやめようと思ってもなかなかやめられない、継続的な皮膚への損傷のことを指しています。精神疾患ガイドライン『DSM-4』では、皮膚むしり症ではなく抜毛症・抜毛癖などの一種として考えられたりしましたが、新しい『DSM-5』では皮膚むしり症として、診断基準が独立して設けられるようになりました」

 具体的に皮膚むしり症には、次のような症状が上げられる。
・繰り返し皮膚をむしるために皮膚に損傷がみられる
・皮膚をむしる行為を自らやめたいと思い、何度もやめようとしたりしている
・皮膚をむしる行為で大きな苦痛が生じたり、日常生活に支障をきたしている

「患者は、皮膚が常に荒れてしまい社会的精神的苦痛が増悪します。また、むしってしまった皮膚を人に見られるのを恥ずかしく思ったり、悪いことだと思い、隠したり、外出を控えたり、活動を制限するなど、社会的にも大きな影響があるのです」

 病気とは気づかずに「悪い癖」のひとつと考え、悩む人も多い。診断基準があるものの、実際には、他の病気でも皮膚をむしる行為がみられるものもあり、診断が難しいのが現状である。

「定義として難しいのは、薬物や虫刺されなどの影響はまったくなく、潔癖・清潔観念から生じる強迫性障害の手の荒れやひっかき等とは異なる、というところです。ストレスを抱えたお子様に多い病気ですが、最近では比較的若い女性にも増加している傾向にあります。月経との関連も示唆されており、ストレスが大きな原因となります」

 不安やストレスから無意識に皮膚をむしることを繰り返すが、皮膚炎等で見た目の悪化を伴うことで、皮膚をむしった後で自分自身に嫌悪感を抱き、精神的にバランスを崩すこともある。

 有村の投稿によって、一気に皮膚むしり症の認知度は上がり、これまで悩んでいた人にとっては大きな救いの手となっただろう。治療することは可能であり、皮膚をむしり、皮膚炎を起こす悪循環を断ち断ち切ることが重要である。皮膚をむしった痕を人に見せることを嫌い、医療機関へ行かずに悩む人も多い。

「皮膚むしり症は、外見だけの原因ではなく、身体的症状と精神的原因とが関連しているケースも多いので、皮膚に異常があれば皮膚科へ、精神的な影響がありそうならば精神科を受診し、継続的治療を行うことをおすすめします」

 皮膚むしり症を治すには、治療を継続することが重要である。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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