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「塚田農場」のAPHD、営業制限をチャンスに変える…“コロナ後”見据え大量の職人育成、新業態店展開

文=横山渉/ジャーナリスト

 クールを重ねるごとに教え方がブラッシュアップされて、一過性の経験で終わらせるのはもったいないと思っています。将来的に「職人カレッジ」みたいな、日本の焼き鳥の食文化を世界に発信していくことができるのではないかと、そんな構想も出てきました。

――どうして人材育成の強化を?

野本 新業態の店舗展開が主な目的ですが、もともとあった国内180店舗ぐらいの店舗の半分以上は既存店のままにします。休業明けに、以前の8割しかお客様が戻ってこなかったとしても、ちゃんと利益が出る体質にしなければなりません。家賃(テナント料)や人件費を下げるにしても、限界があります。売上が7割に落ち込んだからといって、人件費を7割に下げられるわけではない。アルバイト主体のファストフードならまだしも、社員比率の高い当社ではできない。生産性を上げていくしかないわけです。

 そのために足腰をどう鍛えるかという一番地味なところが人材育成です。人材育成は職人だけでなく、ホールスタッフも、商品のおいしい理由を学び直すとか、自分たちのブランドコアは何か、レストランサービスの基本を見つめ直すとか、そういう研修もやっています。それから、生産性向上を助けるのはDX(デジタルトランスフォーメーション)です。

――お客が自身のスマホを使用して注文するモバイルオーダーシステムなどでしょうか。

野本 はい。しかし、巷にたくさんあるモバイルオーダーでは私たちの強みが生かせない、あるいは導入することで強みが消えてしまうと思っていました。結局は生産性が上がらないシステムばかりでした。モバイルオーダーで多いのは、商品名と写真がずらりと並んだインターフェースです。当社で導入するのは、そうした情報に加え、商品のPR文や料理に合うおすすめアルコールまで表示されるものです。

 配膳ロボットみたいに単純に効率化を進めるのではなく、外食として選ばれる理由は何かということを、もう一度再認識できるようなシステムです。今行っていることは、コロナ対策というだけでなく、コロナをきっかけに事業の本質に立ち返らせてもらったということです。

 コロナ禍が収まらないなか、外食産業にとっては先が見えない状況が続く。野本氏は「パラリンピックが終わるまでは我慢しなきゃいけないだろうという想定で動いている」と話す。飲食各社はコロナ収束後を見据えてもがいている。

(文=横山渉/ジャーナリスト)

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