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富士山・登山鉄道構想が頓挫の危機?地元・富士吉田市が反対、県と富士急の対立激化

文=編集部
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 一方、県は同社が起こした訴訟に対し、損害賠償など計約92億円を求めて反訴する意向を表明した。県民の財産を有効活用し、適正価格を算定することは行政の重要な責務だが、そもそも論として、年間賃料を20億円に設定することには疑問の声が県内でも多い。山梨県の財界関係者は「二束三文の土地に富士急行が手を加え、付加価値を生み出しているにもかかわらず、県の対応はおかしい」と批判する。

 富士急と犬猿の仲の長崎幸太郎知事は当サイトの5月19日付インタビュー記事で、県の魅力を磨き上げるため同社も含め、企業や地域が潤う社会を築いていく意向を表明。その上で、「富士急さんと一緒に、山梨に新しい時代を拓いていきますよ」と述べているものの、対立が深まっているため、今後の展望が見えない。

整備費1400億円

 検討会がまとめた構想によると、整備費は総額1400億円程度に上る見通し。前提条件として、事業主体は行政ではなく、民間事業者とすることなどを挙げている。具体的な事業者名への言及はないが、JR東日本やJR東海、富士急などが何らかの形で関与することになるのは、想像に難くない。

 富士急は富士北麓で、絶叫マシンで知られるテーマパーク「富士急ハイランド」に加え、ホテルや鉄道、バスを運営するなど富士山観光とは欠かせない唯一無二の存在だ。同社や県は建前上、県有地問題と登山鉄道は別の問題と主張するかもしれないが、対立が解消しなければ、話は進まない。

 もっとも、富士山の地元では、構想そのものに慎重論が根強くあり、理解は得られていないのが現状だ。構想では環境や景観に配慮し、有料道路「富士スバルライン」の上に、次世代型路面電車(LRT)を敷くことが望ましいとしている。一方、開発行為自体が神聖な富士山を傷つけることになるとの見方もある。

登山鉄道は不要

 一部報道などによると、富士吉田市の堀内茂市長は「富士山は信仰の山で傷つけたくない。地元にとって必要性を感じていない」と構想を一喝する。県はLRTが脱炭素に貢献するとしているが、堀内市長は登山シーズン中のマイカー規制や電気バスが普及しつつあることを念頭に置き、「開発で負荷をかけなくても排ガスは抑制できるのでないか」と主張している。

 富士山はこれまでも環境問題と常に隣り合わせだった。富士山では登山者がごみを捨て、人目が届かない青木ヶ原樹海には産業廃棄物が大量に投棄されるなど、地元を悩まし続けてきた。1990年代には世界自然遺産への登録を目指す動きがあったものの、ごみ問題がネックとなり、国が国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産センターへの推薦を断念した。

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