NEW

スズキ、事実上のトヨタ傘下入り…崩れるインド市場の牙城、EVを一車種も投入できず

文=編集部
【この記事のキーワード】, ,

スズキの将来を託すべき人材、後継者として期待していただけに、私の喪失感、失望感は言葉では表せないほどでした」

 通産省(現・経済産業省)のエリート官僚だった小野氏は修氏の長女と結婚。修氏に口説かれて01年に役所を辞め(最後のポストは経済産業政策局行動課長)、スズキに入社した。小野氏の早すぎる死で後継者問題は暗礁に乗り上げた。後継者問題がワンマン社長を生涯現役にさせた一番の理由だ。15年、長男の俊宏氏を社長に指名した。

これからの100年をトヨタに託す

 自動車業界は電動化や自動運転といった新技術で100年に1度ともいわれる変革期にある。鈴木俊宏体制にとって電動化対応は大きな課題だが、インド市場の動向も気になる。

 2020年度にスズキは牙城だったインド市場でシェア50%を割り込んだ。インドの成長に目をつけた長城汽車や上海汽車といった中国勢、韓国の起亜自動車が相次いで参入。シェアを奪われた。インド政府は電気自動車(EV)を推進しており、充電インフラ整備のためにインセンティブ政策を打ち出している。それなのに、スズキはインドにEVを1車種も投入できていない。このままでは、50%のシェアを回復するどころか、ずるずるとシェアを落としかねない。

 カギを握るのは2019年に行ったトヨタ自動車との資本提携だ。生涯現役を公言してきた修氏は、「次の100年をどうするか」を常に考えてきた。米ゼネラルモーターズの破綻、後継者として育ててきた娘婿の死、独フォルクスワーゲン(VW)との法廷闘争――。苦難の連続だったが、スズキの行く末が常に頭にあった。

 ITをフルに活用するCASE時代の自動車業界は、競争相手も競争軸も様変わりする。修氏がパートナーに選んだのはトヨタである。創業家出身の豊田章一郎・トヨタ名誉会長とは「心が通じ合える」と語っていた。先代トップから「何かあったらトヨタに」という言葉をかけられていたという。トヨタもスズキも静岡県遠州地域を源流とする企業。地縁で結びついた。

 19年8月28日、トヨタと資本提携で合意した。トヨタが960億円出資してスズキの5%程度をもつ。スズキもトヨタに480億円程度出資する。スズキは20年3月15日、創立100周年を迎えた。次の100年を歩むパートナーとしてトヨタを選んだことになる。

「有給休暇は死んでから嫌というほどとれる」と広言する修氏だが、体力、気力など総合的に勘案すると、これからもスズキを牽引し続けるのは難しい。トヨタとの資本提携は、後継者問題を視野に入れたものであることは間違いない。

 修氏が第一線から退いた。事実上、スズキがトヨタの傘の下に入ったことを意味している。

(文=編集部)

Business Journal

企業・業界・経済・IT・社会・政治・マネー・ヘルスライフ・キャリア・エンタメなど、さまざまな情報を独自の切り口で発信するニュースサイト

Twitter: @biz_journal

Facebook: @biz.journal.cyzo

ニュースサイト「Business Journal」

情報提供はこちら

RANKING

5:30更新
  • 企業・業界
  • ビジネス
  • 総合