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“元ヤンチャ”愛甲猛が見た中田翔暴行事件の最大の不幸「俺にとっての落合さんがいない」

文=小川隆行/フリーライター
元ヤンチャ愛甲猛が見た中田翔暴行事件の最大の不幸「俺にとっての落合さんがいない」の画像1
選手名鑑2021 – 中田 翔 – 北海道日本ハムファイターズ」より

 東京オリンピック期間中のエキシビジョンマッチ、北海道日本ハムファイターズ対横浜DeNAベイスターズの試合前。日本ハムの主砲・中田翔が後輩投手に暴行をはたらき、無期限出場停止の処分を受けた。打点王を3回も獲得した「チームの顔」は、自らの愚行により前代未聞の罰を受けてしまった。

 どんな要因から起きた一件か定かではないが、事の顛末を新聞記事で読んだ私は、元プロ野球選手に感想を聞いた。

 千葉ロッテマリーンズの顔だった「昭和のヤンチャ選手」愛甲猛である。

拍子抜けするほどの礼儀正しい対応

 中田のことを語る前に、愛甲がどのような人物であるかを書かせてほしい。

 1980年夏。横浜高校の主将&3番投手として全国制覇を成し遂げ、ロッテオリオンズ(現・千葉ロッテマリーンズ)に入団。投手として3年間がんばるも芽が出ず、打者に転向すると才能が開花、ロッテの顔となった。中日ドラゴンズ移籍後の99年には、星野仙一監督のもとで代打の切り札として優勝に貢献している。

 現役を引退して3年が経った2003年。野球雑誌を手がけていた私は、愛甲に電話で取材を申し込んだ。

「ああ? 何が聞きたいの?」――こんなぶっきらぼうな返事を予想していた私は、拍子抜けした。恐る恐る電話で取材を申し込むと、「はい。わかりました。では明後日の午後2時、JR津田沼駅の改札でお待ちしています」。

 ものすごく礼儀正しかった。

 取材でも、現役時代の話はもちろん、野球界の常識や非常識など、私の質問に対して真摯に答えてくれた。取材が終わると、私は得も言えぬ感覚を味わった。愛甲猛とは「不器用だけどフレンドリーな人物。すごく優しい」と感じた。

自分の目で見てきた球界の“どぎつい”裏話

 20年近く野球雑誌をつくってきた私は、有名無名を問わず100人以上の野球選手から話を聞いてきた。ほとんどの人とは、悪く言えば「その場限り」。仕事を通じての関係性であり、初対面で私に興味を持つ選手などいなかった。

 しかし、愛甲は違った。「小川さんは、どんな本をつくってきたの?」――こんな問いかけをしてくれたのだ。

 やがて、愛甲と親密になりプライベートでも遊ぶようになった。私が率いる草野球チームを指導してもらったり、神宮球場でナイター観戦をしたり、時には競艇でヤラれまくった。

 並行して、どぎつい話をしてくれるようになった。そんな話ほど、耳がダンボになる。動画ならば確実に“ピー音”だが、それはさておき。

 一つだけ感じたことがあった。愛甲が語る言葉はすべて自身が目にしてきた真実であり、加えて、人を評する口調が悪口に聞こえないのだ。現役時代に仕えた金田正一のおもしろさ、張本勲のすごみ、落合博満のプライベート。数々のトークに芸を感じる。リスペクトしている先輩選手を、おもしろおかしく話してくれるのだ。

 かくして、私は愛甲猛の著書『球界の野良犬』(宝島社刊)を手がけることとなった。この本は、プロ書評家の吉田豪さんに絶賛してもらえた。

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