NEW

『スッキリ』アイヌ差別検証番組、決定的に欠けていた点…局内で「何が差別表現に当たるか」認識薄らぐ

協力=水島宏明/上智大学文学部新聞学科教授<テレビ報道論>
【この記事のキーワード】, ,

 でも今回の『24時間テレビ』は私もずっと見ていましたが、アイヌの人が登場するコーナーはなかったように思います。『スッキリ』の検証コーナーでは「今後、『スッキリ』などで『アイヌ文化』を深く理解し広く伝える企画を継続して放送してまいります」と誓った。メインキャスターの加藤浩次さんが「我々は今回の放送で終わりだとけっして思っていません。むしろ今回が始まりだと思っています」とアイヌ民族の歴史や文化について勉強しながらよりよい番組づくりをめざしていきます」と述べた後で2人の局アナの出演者とともに頭を下げましたが、これは『スッキリ』だけの問題ではなく、日本テレビ全体の課題だと思います。その意味では『24時間テレビ』などの機会を活用することを考えてほしい。検証番組は、反省したものの局全体の問題ではなく「『スッキリ』だけの問題」のように総括していた印象がありました。

 また、『24時間テレビ』が放送されている間に、NHKのEテレ『バリバラ』が『2・4時間テレビ』という番組を放送しました。障害者などマイノリティーに注目が集まるこの時期に、大事だと考えるテーマで生放送をぶつける一種のパロディー番組といってもいいもので、以前は障害者を無理やり感動的に描こうとしているとして「感動ポルノ」の番組を批判しました。今回、6回目の放送でしたが、驚いたことに、今年の『2・4時間テレビ』はその3分の1ほどの時間を使って扱ったのはアイヌ問題でした。

 日本テレビの『スッキリ』で問題になった差別表現が、いかにアイヌ民族の当事者にとって重い心の傷となってしまうのか。アイヌ民族の女子大生が生中継で自分の経験を涙ぐみながら話していました。彼女の涙の訴えは見ていて心が揺さぶられるような迫力がある放送でした。その差別表現が歴史的に背負ってきた差別意識をきちんと可視化させた、すばらしい番組でした。差別表現を具体的には出さなかった日本テレビとは違い、具体的な差別表現そのものを本人やスタジオのキャスターらが語り合っていましたが、制作した人たちに覚悟があるから、あえて触れることができたのだと思います。

 それに比べれば、『スッキリ』での検証番組は局の覚悟がどこまであったかというと、BPO向けのセレモニーで終わったような「軽さ」があったように感じました。加藤浩次さんらもやると宣言した以上、覚悟をもってこれから臨んでほしいと思います。

(協力=水島宏明/上智大学文学部新聞学科教授<テレビ報道論>)

●水島宏明

上智大学文学部新聞学科教授、元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター

1957年生まれ。東大卒。札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー『母さんが死んだ』や准看護婦制度の問題点を問う『天使の矛盾』を制作。ロンドン、ベルリン特派員を歴任。日本テレビで「NNNドキュメント」ディレクターと「ズームイン!」解説キャスターを兼務。『ネットカフェ難民』の名づけ親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。2012年から法政大学社会学部教授。2016年から上智大学文学部新聞学科教授(報道論)。放送批評誌「GALAC」編集長。近著に「内側から見たテレビーやらせ・捏造・情報操作の構造ー」(朝日新書)、「想像力欠如社会」(弘文堂)

情報提供はこちら
RANKING
  • ジャーナリズム
  • ビジネス
  • 総合