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この著名な鉄道愛好家は国鉄の職員、それもかなり高い役職に就いていた人で、それゆえ自由に撮影できたのだ。部内で記録を残すという大義名分も立ったのであろう。とはいえ、今日では線路に降りての撮影はたとえJRの社員であっても認められない。いやJRの社員だからこそ許されないというのが今日の考え方である。
国鉄の職員としても、鉄道愛好家としても著名な人が線路に降りて撮影しているのだからと、ほかの撮り鉄も同様な行動を選択して撮影した。今日残されている写真から明らかだ。それでも撮り鉄の行動がニュースになるほど報じられなかった理由は、当時はカメラが高価で撮り鉄の絶対数が少なかったからにすぎない。
「混乱がなければ『結果よし』で済むのではないか」との意見もあろう。だが、線路に降りて撮られた写真は、当たり前だが人垣越しの写真ではないので、車両だけが美しく写っている。後年になって、このような写真がお手本と見なされたことも今日の撮り鉄に悪い影響を及ぼしているのではないだろうか。
筆者は特別な日に鉄道の写真を撮影して大勢の人の姿が写っていることなど当たり前と考えるが、撮り鉄にとってはあってはならない一大事だ。先に述べたように根本的な解決策はカメラの進歩を待つとして、それまでの間は価値観を変えるほかない。いまどのくらい影響力があるのか定かではないが、手本となる写真を載せる鉄道趣味雑誌もあえて人垣のなかから撮影された写真を載せるようにしてほしい。そうすればSNSで「いいね」をもらえる写真の有り様も変わる。逆にいうと、価値観の変化を創造できなければ、この手のトラブルは今後も続くであろう。
(文=梅原淳/鉄道ジャーナリスト)
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