「代表的なのは、自動的に相手の頭に照準を合わせる“オートエイム”。狙いを定めなくても撃つだけで相手に命中する仕様のため、実装すれば遠距離の撃ち合いだとほぼ負けることはありません。ほかにも、壁越しに相手の様子が透けて見る“ウォールハック”や、通常の何倍ものスピードで高速移動するチート行為もポピュラーです。とりわけ悪質なのが、プレイ開始と同時に対戦相手のハードウェアを強制的にシャットダウンさせる手口です。これは、ここ1、2年で被害を訴える人が急増しており、対策が急がれています」(同)
チートツールで釣る詐欺行為も急増中
オンラインゲームの普及に伴い、犯罪行為として摘発の対象となったチート。日本国内における最初の摘発事例は14年に遡る。対戦型シューティングゲーム「サドンアタック」にて、前述の「ウォールハック」や対戦相手の頭部を巨大化させる「ビッグヘッド」、上空から相手を攻撃する「空中浮遊」といったチートツールの使用および販売によって、未成年(当時)の男性3人が書類送検された。
「このときは、他人のコンピュータや、その中に入っているデータを損壊したり、不正の指令を与えて業務を妨害する罪である『電子計算機損壊等業務妨害』が適用されました。ほかにも、チート行為やツールの販売に対しては、不正につくられたデータを他人の事務処理を誤らせる目的で使用、供用した者に適用される『私電磁的記録不正作出罪・同供用罪』や『著作権侵害』などの罪状で告発が可能です」(同)
「電子計算機損壊等業務妨害」の罪に問われた場合、5年以下の懲役または100万円以下の罰金を払う必要があり、「私電磁的記録不正作出罪・同供用罪」では5年以下の懲役または50万円以下の罰金、「著作権侵害」は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科せられる。
いずれの罪状もゲーム内のチート犯罪を取り締まるために設けられたものではなく、以前より、企業が有するデータサーバへのサイバー攻撃やクレジットカードの不正利用に対して適用されていたもの。ゲーム人口の増加によってチート行為の発生率は右肩上がりの傾向にあるが、今後も上記を筆頭とした既存の罪状で取り締まっていくというのが、国の基本的な方針だ。
不正な方法でゲームを有利に進めること自体が犯罪とされているのだが、コロナ禍以降はチートツールの販売を建前にした詐欺被害も増加中だという。