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ネット情報を鵜呑みにする高齢者たち…駆使してるつもりが振り回され、消費者被害が激増

文=林美保子/フリーライター

 東京オリンピック・パラリンピックでは、選手など関係者が外部との接触を避けるために、開催地を大きな泡で包むように囲う「バブル方式」がとられた。ネットにも、泡の中に包まれたように自分が見たい情報しか見えなくなる「フィルターバブル」と呼ばれる現象がある。多くの検索サイトには、フィルター機能によって検索履歴などから個人に最適化した情報が手に入りやすい仕組みが取り入れられている。一方で、望まない情報から遠ざけられるため、自分と異なる価値観・考え方に触れる機会がなくなるという問題点がある。

 さらには、自分が見たい情報を積極的に集め始めると、同じ意見の情報ばかりが飛び交う閉鎖的な空間が出来上がり、偏った意見が真実だと誤認してしまう危険性をはらんでいるという。これを、閉じられた空間で音が共鳴するように設計・装備された音楽録音用のエコーチェンバー(残響室)になぞらえて、「エコーチェンバー現象」と呼んでいる。

 弁護士大量懲戒請求事件を起こしたフォロワーたちは、フィルターバブルの中に閉じ込められてしまったのではないだろうか。実は私自身、長年パソコンを使っていたにもかかわらず、この事件を取材するまで、フィルターバブルに関する知識がまるでなかった。私と似たようなシニアは、案外多いのではないだろうか。

消費者センターへの相談件数は「60代以上」「情報通信関連」が激増

 全国の消費者センターに寄せられた消費者被害に関する相談件数は、60歳以上が増加傾向にあり、20年には41%を占めている。かつては高齢者の消費トラブルといえば、訪問販売や電話勧誘販売が多かったのだが、近年は通信販売に関する相談件数が過去最高になった。特にネット通販が多い。

 成人向けサイトや出会い系サイトに関するトラブルも多い。無料だと思ってこうしたサイトにアクセスすると、いきなり高額な料金を請求されたりするのだが、家族に知られたくなくて泣き寝入りするケースも少なくないらしい。

 そのほかにも、インターネット接続回線や海外ホテル予約など情報通信関連の相談が多い。また、19年度における広告や個人間取引などSNSに関する相談件数については、10年度に比べると全体で約6倍になったが、50歳以上は30倍以上と大きく増加している。

 インターネットは便利だが、危険もたくさん潜んでいる。私もデジタル化の波にもまれながら、なんとかついていっている世代であるが、職業柄ウラをとる習慣があるため、情報を集めて客観的な判断をするように努めている。迷惑メールかどうか判断がつかない場合には、必ずネットで検索して確認するようにしているので、今のところは被害に遭わずに済んでいる。

 インターネットのシステムも悪徳業者の手法も日進月歩で進化している。シニアはネットの操作ができることに満足せずに、そのリスクに細心の注意を払う必要があるのではないだろうか。

(文=林美保子/フリーライター)

●林美保子/フリーライター

1955年北海道出身、青山学院大学法学部卒。会社員、編集プロダクション勤務等を経て、フリーライターに。主に高齢者・貧困・DVなど社会問題をテーマに取り組む。著書に『ルポ 難民化する老人たち』、『ルポ 不機嫌な老人たち』(共にイースト・プレス)。

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