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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

総投資額50兆円超、韓国「K半導体ベルト」構想の衝撃…日本、輸出規制厳格化が逆効果

文=湯之上隆/微細加工研究所所長
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1.半導体製造中心地への飛躍のためのインフラ支援拡大

1-1 2030年までの半導体業界の累積投資額を約510兆ウォン(約51兆円、1ウォン=約0.1円)以上と想定し、政府は半導体関連のR&Dと施設整備に対し税制支援を行う。R&Dは企業規模や技術内容により2%~50%の税額を控除し、設備投資は企業規模や設備技術により1%~20%の税額を控除する。

1-2 8インチウエハーラインのファウンドリ増設、素材・部材・設備および先端パッケージング施設への投資を支援するために、1兆ウォン以上の「半導体等設備投資特別資金」を新設する。貸出金利は1%分を減免、返済期間は5年間据え置き、15年間分割償還とする。

1-3 10年分の半導体用純水のための水資源確保や電力インフラ構築時の最大50%までの分担支援などを通じたインフラ支援を行う。

2.人材・市場・技術確保などの半導体の成長基盤の強化

 大学定員の拡大、学士・修士・博士・実務教育など全課程の支援を通じ、2022年~2031年の10年間に半導体産業人材3万6,000人を育成する。

3.半導体産業の危機対応力の強化

3-1 半導体関連産業支援のための「半導体特別法」立法化に向けた協議を開始する。規制の特例、人材育成、基盤施設支援、投資支援、R&D加速化などが含まれる。

3-2 技術保護のため、M&A審査制度や国家核心技術のセキュリティー管理を強化する。

韓国の「K半導体ベルト」の日本への影響

 前掲JETROのビジネス短信には、「韓国内では短期的に技術の確立が難しいEUV(極端紫外線)露光と、先端エッチング、素材分野は対内直接投資の誘致を拡大する」ということが書かれている。

 つまり、これ以外の製造装置、材料、部品などは、韓国内で生産することを目指していると考えられる。その拠点となるのが、新たに設立される龍仁と華城になる。これは、競合する日本の製造装置、材料、部品にとっては脅威となる。

 なぜ、韓国がこのような構想を掲げたのか。それは、2019年7月1日に日本政府が突如、韓国に対して半導体3材料(フッ化ポリイミド、EUVレジスト、フッ化水素)の輸出規制を厳格化した事件が背景にあると考えられる。

 この3材料のなかでは、特にフッ化水素の輸出規制の厳格化のインパクトが大きかった。というのは、サムスン電子SKハイニックスも、フッ化水素の在庫が切れたら、メモリも非メモリも、レガシーか最先端かも関係なく、半導体が1個もつくれなくなる事態になったからだ(図3)。

総投資額50兆円超、韓国「K半導体ベルト」構想の衝撃…日本、輸出規制厳格化が逆効果の画像4

 そのため、サムスン電子、SKハイニックス、および韓国政府はパニックに陥ったと思われる。それほど、日本政府の輸出規制厳格化の影響は甚大だった。そして、これに懲りた韓国は、日本がボトルネックになっている製造装置(その部品や設備)、材料、素材などをすべて洗い出し、自国生産を目指すようになったわけだ。

 この国家政策を再確認し、改めて半導体に関する供給網を自国内で構築するという決意が「K半導体ベルト」構想になったと思われる。つまり、2019年7月1日に発表した日本政府の政策は、ブーメランのように返ってきて日本企業の競争力を削ぐ結果になってしまった。まったく、日本政府は余計なことをしてくれたものだと思う。

(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)

●湯之上隆/微細加工研究所所長

1961年生まれ。静岡県出身。1987年に京大原子核工学修士課程を卒業後、日立製作所、エルピーダメモリ、半導体先端テクノロジーズにて16年半、半導体の微細加工技術開発に従事。日立を退職後、長岡技術科学大学客員教授を兼任しながら同志社大学の専任フェローとして、日本半導体産業が凋落した原因について研究した。現在は、微細加工研究所の所長として、コンサルタントおよび新聞・雑誌記事の執筆を行っている。工学博士。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『電機半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北』(文春新書)。

・公式HPはhttp://yunogami.net/

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