
4日、自民党の岸田文雄総裁が第100代の首相に選出され、14日には衆議院が解散。19日の衆議院選挙公示を目前に控え各党が事実上の選挙戦に入り、“政治のシーズン”を迎えている。
そんななか、現在公開中の映画『総理の夫』が話題を呼んでいる。中谷美紀演じる日本初の女性総理大臣、相馬凛子と、田中圭演じるその夫、相馬日和が政界や世間に翻弄される姿を、ときにコミカルに、ときにシリアス展開で描いた本作は、9月25~26日の国内映画全国週末興行収入ランキング(興行通信社提供)で2位にランクインするなど、ヒットの兆しをみせている。
では、映画のプロの目から見た本作の評価はどうなのか。映画業界関係者に話を聞いた。
情けない夫役がはまった田中圭
「作中のどこか頼りない男性陣をコントラストとして、中谷美紀や貫地谷しほりなど社会で活躍する女性のかっこよさを強調した点が印象的で、現在のジェンダーのあり方をしっかりと訴えかけているように思います。それと同時に、リアルの政治や社会がそれにまったく追いつけない現状に絶望も感じました。同じようなタイミングで現実の自民党総裁選が行われましたが、高市早苗さんと野田聖子さんという女性候補者は、2人の男性候補者に最初の開票で敗れている。もちろん、女性が国のリーダーになったからといって進んだ国家というわけではありませんが、理想と現実のギャップを改めて突きつけられたような感覚です。ただ、この映画は、社会について考えるきっかけを与えてくれる、非常にメッセージ性を多く含んだ作品である、ともいえるかもしれません」
本作は政治という真面目な題材ながら、コメディ要素も散見されるのが特徴だ。
「私も劇場で観ましたが、観客にもウケていましたし、隣の席の若いカップルか夫婦なんかは、コメディパートのたびに声をあげて笑っていましたよ。田中圭がキャスティングされているのも大きいですが、このコメディの部分が若い女性の足を運びやすくしているのかもしれませんね」
キャスティング面ではどうか。
「キャスティングは非常に良かった。中谷美紀は女性総理としての品がありましたし、病室で絶対安静なのに仕事のことばかり考えて、夫に『大丈夫って言ってよ』と訴えかけるシーンは鬼気迫るものがありました。その後、ハッと気づかされて声のトーンを落ち着かせる演技は、ベタなようでなかなかできない。田中が演じる情けない夫も上手かった。選挙カーで商店街のおじさんに怒られたときに見せた引きつった表情も、彼の演技の振れ幅を感じさせましたね」