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イオン、キャンドゥ買収で生まれる絶大なシナジー効果…真のWin-Win関係構築

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 また、イオンの海外事業を取り巻く不確定要素の増加も、キャンドゥ買収の一つの要因だろう。足許ではイオンが事業運営を強化してきた中国経済の減速が鮮明だ。短期的に、イオンにとって低価格商品分野での商品開発力を強化するなどして、より多くの国内需要を獲得し、収益基盤の強化に取り組む重要性は高まる。その上で、やや長めの目線で今後の展開を考えると、イオンは成長期待の高い東南アジアの新興国事業の強化などに経営資源を再配分するだろう。

イオン傘下に入るキャンドゥの思惑

 他方で、イオンによる買収提案は、キャンドゥにとってかなりの魅力があったと推察される。その背景要因として、3つの点に注目したい。

 まず、キャンドゥはコスト増加リスクの高まりに直面している。現在の世界経済では感染再拡大による供給制約の深刻化や物流の混乱が起きている。さらには中国や欧州など世界的な電力不足によって天然ガスや石炭、原油などエネルギー資源の価格が高い。電力価格の上昇によって、アルミなどの非鉄金属の価格にも上昇圧力がかかっている。いずれもキャンドゥの売上原価や販管費を増加させ、利益率は低下する恐れがある。コスト増加への対応力を引き上げるために、イオンが持つ物流網などを活用する意義は大きい。

 2点目に、キャンドゥにとってイオンの傘下に入ることは、より安定した、新しい店舗運営の基盤確保につながる。2020年11月期のキャンドゥの決算説明資料には、商業施設の閉鎖継続が事業運営上のマイナスの要素と記載された。イオンの運営するショッピングモールへの出店強化は、店舗の運営基盤の安定化につながるだろう。それに加えて、主として都心の主要駅近くに店舗を構えるキャンドゥにとって、郊外のショッピングモールへの出店は新しい店舗運営にもつながる。それは、コロナ禍でテレワークが増加した結果、自然環境豊かな郊外での生活を重視する人の増加という変化に対応するためにも重要だ。

 3点目に、キャンドゥには海外事業を強化したいとの考えもあるだろう。2015年、モンゴルにキャンドゥは店舗を開き、2016年11月期には海外店舗数を30に増やそうとしていると報じられた。しかし、2020年11月末時点で、全店舗1,065のうち、海外店舗数は8にとどまっている。海外事業の運営は苦戦しているとの印象を持つ。中長期的な目線でキャンドゥの事業運営の展開を考えると、相対的に成長期待の高いアジア新興国などでの事業運営の強化は成長実現に重要だ。コスト増加への対応、出店基盤や海外事業戦略の強化などのためにキャンドゥはイオンによる買収に賛同したと考えられる。

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