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頻尿に悩む人に朗報のはずの「ボトックス」、なぜ普及しない?費用対効果は…

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法はなぜ普及しない?

 ボツリヌス毒素による治療は「ボトックス」と呼ばれ、美容医療の分野では、顔の筋肉を動かすことによって起きる表情ジワの改善に使用されており、安全性は高い。ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は、ボトックスにより膀胱の筋肉を緩めることで症状を緩和する。

「実は、保険適用となる以前から、自由診療によって取り入れている医療機関もありました。しかし、全額自己負担となるため、希望する患者さんは多くはいなかったのが実情です」

 それが保険適用となり、多くの医療機関で行われるようになるかと思われたが、実際はそうではないという。

「保険適用となったことで、ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法が適すると考えられる患者さんには治療を行いやすくなりましたが、どの過活動膀胱の患者さんにも適用できるかというと、そうではありません。ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は、局所麻酔を打ち、尿道から膀胱内に入れた内視鏡で観察しながら、専用の細い注射針を膀胱の筋肉に注射します。その量は、ボツリヌス毒素を100~200単位、20~30箇所に分けて打ちます。入院の必要はなく、外来で行うことができ、所用時間はわずか10~20分程度です」

 通常、治療後2~3日で効果を感じるが、6カ月程度で徐々に効果がなくなるという。

「効果が得られ、治療を継続する場合には1年に2回、膀胱への注射が必要となります。使用するボツリヌス毒素の量が多いため、保険適用とはいえ窓口負担は1回の治療で3万円ほどになり、1年に2回治療を行うと約6万円。費用対効果は患者さんによって異なると思います。また、ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は泌尿器の専門医しか行うことができないので、治療を行う医療機関が限られます」

 世界では90カ国以上の国で行われ、安全性が高い治療法ではあるが、副作用が起きる可能性もある。

「尿道から内視鏡を入れるため、まれに細菌感染が起きることもあり、その場合は抗生物質を服用します。また、ボトックスの効果により、筋肉が緩みすぎて尿を出すことが困難となり、尿閉(尿が出ない)になるケースが5~9%程度、起きると報告されています。尿閉となった場合には、尿道から管を入れて尿を出す自己導尿を行う必要があります」

 ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法に伴い、さまざまなケアが必要となることがあるため、医師とよく相談する必要があるが、興味がある人は泌尿器科の専門医に相談してほしい。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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