鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

関節の激痛や倦怠感、自己免疫疾患の可能性も…患者が増加、重要な保険の知識

「Getty Images」より

 新型コロナウイルス感染拡大に伴いクローズアップされたのが「免疫力」だ。免疫とは、体内に入ってくるウイルスや細菌などから体内を守る自己防衛の仕組みだ。納豆やヨーグルト、キムチといった発酵食品が腸内環境を整え、免疫力アップに効果的で新型コロナ感染防止につながるとの報道も盛んにされ、一時スーパーの棚からこれらが消えるという社会現象も生まれた。

 その一方で「自己免疫疾患」が毎年増加しているというのは、ご存じだろうか。自己免疫疾患とは、本来なら自分を守ってくれるはずの免疫が、自分自身の正常な組織や細胞をめがけて攻撃を仕掛け、発熱や倦怠感、臓器や筋肉、関節などのさまざまな箇所に痛みや症状を発症してしまう疾病だ。関節などに違和感を感じ、徐々に関節や筋肉痛にこわばりなどが発症し、臓器などに影響を与えるのが一般的のようだ。「朝起きたら、筋肉がコンクリートのようにこわばって、立つことも座ることもできず、動かすたびに激痛が走った」と急変する人もいる。あるいは倦怠感がひどい人もいる。

 代表的な疾病に膠原病(30種類ともいわれる疾病の総称)がある。自己免疫疾患には関節リウマチや全身性エリテマトーデスのように全身の臓器などに発症する「全身性自己免疫疾患」とバセドウ病や橋本甲状腺炎などの「臓器特異的自己免疫疾患」に大別される。

 関節リウマチが自己免疫疾患の一つというのは意外かもしれない。ただ、高齢者がかかる病気と思うのは、大いなる誤解だ。東京女子医大の膠原病リウマチ痛風センターのHPが次のように解説している。

「関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis)は自己免疫疾患の一つで、全国で患者数が70万〜80万人と推定され、いわゆるリウマチ性疾患の中でもっとも患者数が多い疾患です。男女比は1対4と女性に多く、働き盛りの30〜50歳代が発症のピークと考えられています」

 小児がかかるケースもある。自己免疫疾患の患者総数については東京大学科学技術振興機構(JST)が2015年11月6日のリリースで「自己免疫疾患の患者数は、日本国内だけでも数百万人と見積もられている」と発表している(共同発表:自己免疫疾患を防ぐ遺伝子Fezf2の発見~Fezf2は自己抗原の発現を制御し免疫寛容を成立させる~)。ちなみに東京大学医学部付属病院のHPによると2020年度の患者数(入院および通院)は、2万455人にのぼる。

 自己免疫疾患のなかには、難病に指定されている疾病も少なくない。厚労省の補助事業である難病情報センターの特定疾患医療受給者証所持者数を見ると、申請者数は平成20年には64万7604人が、平成26年には92万5,646人と約1.5倍に増えている(特定疾患医療受給者証所持者数 – 難病情報センター)。

 そのなかから、自己免疫疾患になり、特定疾患医療受給者証を所持する人をピックアップしてみる。自己免疫疾患がすべて特定難病疾病に該当するわけではないが、表を見る限り、毎年増えていることがわかる。

治療法は確立されていない

 ところで、現時点では自己免疫疾患は根本的な原因解明も治療法も確立されていない。

 ただ、先の東京大学JSTのリリースには、リンパ球の一種であるT細胞が体を守る仕組み(免疫寛容)の成立に非常に重要であると記載されている。

 膠原病には専門の資格を持ったドクターが担当するが、そのなかで患者数が多い関節リウマチにも専門医がいる。リウマチの専門医の資格を持っていても、膠原病は専門医の資格を持ったドクターが担当する。このため、かかりつけの内科や整形外科から、大学病院もしくは専門医がいる医療機関を紹介されることとなる。

 膠原病の検査は、他の臓器などへの影響を調べるため、医療機関によっては1~2週間もかけて全身の検査を行うケースもある。その上で、免疫抑制剤や炎症を抑えるステロイド薬などでコントロールをしていく治療が標準的なようだ。最近では分子標的薬(特定の分子にだけ効率よく攻撃する)治療や、リウマチなどでは外科手術を行うケースもある。

 患者数が増加している割りには、自己免疫疾患についてはあまり知られていない。関節や筋肉などの痛みにしても、骨が皮膚を突き破るような激痛で転げ回った人もいるが、肩こりがひどいと思っていた人が、自分でサプリを飲んだりマッサージをしていたが、痛みがひどくなるばかりで、「注射でも打ってもらおう」と行った整形外科がリウマチの専門医だったためわかった人もいる。

 ひどい倦怠感を伴う人もいて、活動量も低下し、やる気を出せない身体状態なのに「やる気がない」と周囲の理解を得られない方も少なくない。本人も自己免疫疾患だとは気がつかず、鬱っぽくなった方もいる。何をやっても疲れが取れない方は、膠原病内科で一度、検査をしてみるのもいいかもしれない。

 自己免疫疾患は、臓器を攻撃したり、がんを併発する場合も懸念されることから、余命の問題もあるが、一昔前までは5年生存率は50%以下といわれた時代もあった。今では診断後10年以上が経過し、専門医の指導の下、投薬を続けながらアクティブに生活する人も大勢いらっしゃる。無事、妊娠・出産をされた方もいる。ただし、治療は一生続くとされている。

 筋肉がこわばる、力が入らない、倦怠感が続く場合は、自己免疫疾患を疑い、「たいしたことはない」「将来を考えると絶望する」と思わずに、早めの受診をすることを強くお勧めしたい。

民間の医療保険

 さて、気がかりなのは、治療費はいくらかという点だ。筆者の調べでは、入院をまったくせずに投薬治療のみという人もいるが、半年近く入院した人もいる。前述のとおり抜本的な治療が確立されていないため、ステロイドも何を使うのか、その量はどれぐらいなのかも一人ひとりの症状などを見ながらのカスタマイズ治療のため、同一条件下でのデータを取ることも難しい。自己免疫疾患の平均入院日数のデータを筆者なりに探したが、見当たらないのはこうした理由からだろう。

 難病認定されれば医療費の助成金制度はあるが、自己免疫疾患は難病に認定される疾病ばかりではない。薬剤が高額で治療に前向きになれないと心配する方もいるが、高額療養費制度で支払った医療費が戻ってくる場合もあるので、経済的に不安な時は、病院や行政、あるいは特定の疾病の患者会で確認していただければと思う。

 頭の片隅に置いておくとよいのが、民間の医療保険だ。今、保険会社は盛んに入院日数の短縮を訴えている。確かに医療技術や薬剤の進化で入院は短縮傾向にある。安価で加入できる入院一時金タイプが発売されたこともあって、「入院一時金保障が必要」「入院一時金タイプだけでOK」という業界関係者もいる。入院日数は数日程度でも、それに伴う前後の雑費も結構な支出がかさむケースも多く、入院一時金タイプの意義はあると考える。

 新型コロナ感染拡大で医療保険の見直しのニーズは非常に高い。20代・30代の若い世代の契約が急増したのも、「若くても病気になる」ことを実感したこと、経済的不安から貯金には手を付けたくないという心理が働いたことがあるようだ。

 特に自己免疫疾患は生涯にわたって付き合っていく疾病だ。場合によっては入院の長期化も珍しくない。治療できる病院が限定される場合もあり、交通費などの諸経費がかかるケースも発生する。

「入院一時金タイプだけで大丈夫。日額タイプは解約しよう」と思い込まずに、日額給付タイプの見直しや検討が不可欠だと考える。入院日額保障のなかには限度日数が30日の短期間の保険もある。限度日数の確認を忘れずにいたい。

 自己免疫疾患はまだまだ研究段階にあり、いつ・誰が・どんな状態のときに発症するかは不明なだけに、絶対にかからないという保証はどこにもない。治療法の確立には、まだまだ時間を要することだろう。しかし人間の英知と医療関係者の情熱や信念は、必ず未来の扉を開くと信じている。

(文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表、治験審査委員)

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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