NEW

SBIによるTOB、新生銀行が飲めなかった少数株主排除と銀行持株会社規制の潜脱

文=松崎隆司/経済ジャーナリスト
【この記事のキーワード】, ,

マネックス証券との提携話

 そのようなかで急浮上したのはマネックス証券との提携話だ。同社会長の松本大氏は08年から11年まで新生銀行の社外取締役を務めてきたこともあり、新生銀行の経営陣とも懇意にしていた。

「マネックス証券との包括業務提携の公表によって当該SBI証券の提案は受け入れられなかったことを認識いたしました」(「公開買い付け開始のお知らせ」より)

 これを目の当たりにしたSBIが態度を硬化させ、さらに株式を買い増し、21年1月28日から3月下旬にかけ4273万7800株(19.85%)を買い増していった。

 一方の新生銀行は株主還元のため自社株買いを行い、4374万3170株の自己株式を取得した。そのためSBIの議決権行使可能な保有株式は20.32%まで上昇、SBIは「金融庁長官に対して、本公開買い付けによる株式取得に関して、2021年8月13日付で、銀行法に基づき必要となる認可の申請を行い、それぞれ2021年9月9日付きで各認可を取得しております」(「公開買い付けに関するお知らせ」より)と発表した。

 SBIは金融庁からTOBのお墨付きをもらったかのような説明となっているが、金融庁から認可が下りたのは20%を超える銀行株の件。TOBは金融商品取引法上の問題で、これも手続きさえすれば問題はない。

 SBIはTOBの目的を(1)提携関係の強化、(2)対象会社の役員の全部又は一部を変更し、最適な役員体制を実現する、(3)上記2つの目的を達成できない場合でも将来的に目的達成に向けて所有割合を機動的に高めておくこと――だとし、SBIは9月9日、一株2000円、TOBの上限を48%にしてTOBを行うことを決定した。

 これに対して新生銀行の取締役会は(1)公開買い付け予定数の上限のない公開買い付けをすること、(2)公開買い付け価格の見直しを行うことといった条件を付け、条件が満たされない限りTOBに反対することを表明。TOBへの対抗措置として、買収防衛策の発動を11月25日に開催される臨時株主総会に付議することを表明した。

買収防衛策導入の理由

 なぜ新生銀行は買収防衛策を導入しようとしているのか。

「今回のTOBにはいくつかの問題がありますが、なかでも大きな問題は部分買い付けによりTOBを望まない株主が受ける『強圧性』と『銀行持株会社規制の潜脱』です」(新生銀行関係者)

 強圧性とは、株主が自身の意思や考えに反してTOBに応じざるを得ないと考える圧力のことだ。株式が48%までしか買われないために、残された株主は、少数株主として取り残され損をするのを恐れてTOBに応募せざるを得なくなってしまう点だ。TOBが成立しSBI側に連結子会社化されれば、新生銀行は上場子会社としてガバナンス上の問題が生じる。新生銀行の少数株主の利益を犠牲にして親会社の利益が図られるという利益相反の問題が生じることが懸念される。

 そのため新生銀行は、自社の株主がこうした不利益を被ることのないよう、全株主に売却機会を設けられるよう買い付け予定数の上限を撤廃するよう求めているわけだ。

 そして2つ目は「銀行持株会社規制」を潜り抜けるスキームだ。SBIはTOBの上限を48%に設定しているが、議決権が50%を超えると銀行持株会社として金融庁に認可を求めなければならない。一方で過去5年間の議決権行使比率をみると平均で86.2%なので、48%の株式を保有すればSBIの実質的な影響力は55.6%になり、事実上単独で新生銀行の取締役選任・解任が実施可能となる。

RANKING
  • 企業・業界
  • ビジネス
  • 総合