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なぜアナログレコードは廃れ、なぜ今、人気再燃しているのか?CDのデメリット

文=明石昇二郎/ルポライター

「これは時代を語ることになりますが、とにかくみんな忙しいんで、聴きたい曲だけを聴けるというのは非常に魅力なんじゃないですか。アルバム買ってその中に聴きたいのが一曲あるとすれば、CDならそれだけをずっと聴ける。情報が氾濫する忙しい時代である現在、欲しい情報だけ取り出せるというCDの特性が非常に喜ばれたんじゃないですか」

 また、アナログレコードでいい音を出そうとすると再生装置にお金と手間がかかる、というのは“常識”だったが、CDならズボラにしてても結構いい音が出てくる。5万円ほどの「CDラジカセ」でもそこそこの音で聴けちゃうのだ。CDは音のレベルの底辺を持ち上げた、とも言えよう。

 そして、小さなCDのほうが場所をとらず、保存も簡単。こんなところにまで東京の住宅事情は反映しているんだろうか。つまりCDは、アナログレコードに比べ「便利」だったのである。CDが発売された当初、ジャズファンやクラシックファンの間から「CDは音がもの足りない」などのクレームが出たが、最近はメーカーの側も音をつくるテクニックをおぼえてきたため、音にうるさい人々の満足をもCDは満たし始めているようである。

「CDなんてクソくらえ!」

 しかしCDへの移行は、決して“いいことずくめ”というわけはなかった。

「日本では『CD、CD』と言われてますけど、どっこい、アナログファンだって沢山いるわけです」

 吉祥寺のジャズ盤専門店「ディスクSHOWA」の松崎政博店長は、ある意味でユーザー切り捨てとも言えるCD移行に対し、憤りを隠せない。なるほどシステム全体が移行すると、それまでのソフトウェアが使いものにならなくなってしまうわけで、つまりアナログからCDにのりかえるということは、同じ内容のソフトをまた買わなくちゃならん、ということにもなる。総どっかえなのだ。メーカーの側がもう新しいLPを出さず、針もつくらないとなると、ユーザーの側はもう、なす術がない。

 CDの欠点には「レコードジャケット」の問題、なんてものもある。ジャケットはそれ自体が一つの芸術になりえた。それがCDとなってからというもの、実に味気ないものになった。LPサイズのものをそのまま小さくしただけなので、ビートルズの「サージェント・ペパーズ」(筆者注:ザ・ビートルズの名盤「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のこと)なんて、CDのジャケットでは何だかわけがわからんものになっている。しかもあれだけ小さくなったところにバーコードが入る。もはや「アート」ではない。

 まだある。表に参加ミュージシャンなどのデータを載せるスペースがなくなり、パッケージの中に入ってしまった。「説明が何もないので、これじゃあ買えない」という声も聞かれる。

 まだまだある。第三世界ではCDなどほとんど普及していないので、世界の音楽に対応しづらくなってしまった。例えばブラジルの音楽など、CDではごく限られた種類しか手に入らない。

        ※

 過去のものを全部否定しているような、いわゆる「CD文化」に根強く反抗しているのは、ジャズファンである。彼らの中には「CDクソくらえ」と断言する者も。その中の一人、前出の松崎さんに再登場してもらおう。

「ジャズファンで、今でもレコードを買い、CDを買わないという人が多いのは、ひとつの“抵抗”なんですよね。でもメーカーはそんなこと知らない。今、レコードが沢山売れているなんてことは、ほんとバカな話なんですけど」

 実は今、アナログレコードは売れているのである。レコード会社の中には、発売しているレコードの返品率がたった2%なんてところもある。現代の“アナーキー”はロックよりジャズだ。

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