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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

年収の壁問題、注意すべきは税金より社会保険料?パート妻「働き損」を防ぐ基礎知識

文=黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー
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 ちなみに妻(39歳以下)のパート収入130万円の場合、社会保険料(協会けんぽ)は月額約1万5,500円。年間約18万6,000円になる。極端な話、129万円で、社会保険料を払っていないほうが手取りは多くなり、逆転現象が起きてしまう。

夫の家族手当の存在も大きい

 このように、妻が働くことによって、自身の手取り額がいくらになるか。そして、妻の働き方で夫の手取りも変動するため、世帯全体で手取りを計算する必要がある。

 そこには、税金や社会保険料だけではなく「家族手当」の存在も大きい。家族手当とは、勤務先が従業員に支給する手当の一つ。所定の条件を満たす家族がいる場合に支給される。

 では、どのくらいの企業が支給をしているのだろうか? 人事院「令和2年職種別民間給与実態調査」によると、家族手当制度を実施している企業の割合は75.9%。このうち、配偶者が対象となっているのは79.1%である。そして、配偶者の収入に制限があるのは85.6%で、その額は103万円が45%、130万円31.7%、150万円9.4%となっている。つまり、前掲の第2・第4の壁がここにも影響を及ぼしている。

 また、厚生労働省「令和2年就労労働条件総合調査」によると、家族手当・扶養手当・育児支援手当などの支給額17,600円。企業規模別にみると1,000人以上が22,200円、300~999人が16,000円、100~299人が15,300円など大企業ほど、その額は大きくなる。

 配偶者に対する手当を廃止して、子どものみに変更するなどしている会社も増えているようだが、家族手当が受けられる間は、働かないという選択肢を選ぶ主婦も少なくない。実際、ある大企業が家族手当から配偶者を対象から外したとたん、その周辺の主婦たちが一斉にパートに出始めたといった話を聞いたことがある。

後編に続く

(文=黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー)

●黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)

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