ビジネスジャーナル ⁄ Business Journal
齋藤
高度な数学的手法やモデルをベースにマーケットを数量的に分析して行なわれる「クオンツ運用」は、最近あまり注目されることがありませんが、私どもアクサ・インベストメント・マネージャーズ(以下、アクサIM)は、元々こうした定量モデルを開発したり、リスク分析を行なったりということをかなり早い段階から行なっていました。新興国の小型株にはとくに自信を持っているので、ご提案させていただきました。
投資効率で言うと、ビッグデータで優良企業を見つけることももちろん大事ですけど、その組み合わせをどう作るかというところも、定量的な判断、クオンツの判断が重要なポイントとなってきます。
良い銘柄を全部買うとか、一番いいものだけを買うという訳では当然ありませんので、マーケットの環境も踏まえた上で、それを常に最適化して持っておくということも同じくらい大事だと考えています。
新興国小型株投資のポイント① ~リスクをコントロールする~
山本
このファンドの良さの一つに、リスクを抑えるために業種をかなり分散しているということが挙げられます。例えば、最近はITなど特定の業種に偏っているファンドも多く見られますが、この「ビッグデータ新興国小型株ファンド」については、国や業種がかなり分散されています。限定されたセクター、国、銘柄だけにバイアスをかけることなく、リスクを薄く広く分散した運用を行なうファンドだと思います。
齋藤
そうですね。新興国の企業は若い企業がほとんどですから、いきなり世界を席巻するような技術がポンと出てくるようなことはあまり期待できません。また、新興国は、政府の支援もあり金融セクターの時価総額が大きい傾向にありますが、小型株ということで限定すると、金融セクターがそんなに多くは入ってきません。結果として、非常にバランスが取れたポートフォリオになってきます。
山本
確かに、新興国株投資は「金融」と「不動産」セクターに偏ってしまうイメージがありますが、このファンドは違いますよね。
齋藤
はい。「金融」も「不動産」も、コングロマリット(=複数の事業を運営する多角化経営企業)化していくと、あまり特徴的なものは出てこない。キラリと光る部分に加え、しっかりした利益成長が期待できる企業を探していくと、そういった業種は上がってこないんです。むしろ、財務内容が分かりやすく、シンプルな事業モデルの企業が相対的に多く含まれるという傾向があります。
山本
確かに、複合的な事業を運営する企業だと、仮にPER(株価収益率)が低かったとしても、本当にそれが正しく実態を反映しているかは分かりにくいですね。これはリスクを抑えるという点においても、かなり大事なことだと思います。2019年10月31日に設定された「ビッグデータ新興国小型株ファンド」の設定来の運用実績(1.5年シャープ・レシオ)を見てみると、公募株式投信の新興国株式カテゴリー*計224ファンドの中で、当ファンドは第1位(2021年9月末時点)となっています。
新興国小型株投資のポイント② ~ポートフォリオを管理する~
齋藤
流動性もかなり意識しています。おそらく、ビッグデータで新興国の小型株というジャンルを運用している会社は、私どもくらいではないでしょうか。ビッグデータと聞くと、データがあればどこでもできるだろうと思われがちですが、データそのものをしっかり自分たちで持てていないと、データ処理すらもできないと思っています。このビッグデータ運用では、想像以上のリターンが出やすいということも実績から出てきており、先進国のモデルではあまり想像ができないようなプレミアム感というか、α(市場平均に対する超過リターン)の追求ができると考えています。
山本
当ファンドは2021年9月30日現在で473銘柄に投資しており、組入銘柄のうち比率が最も大きい銘柄でも0.9%と、かなり分散されています。他のファンドでは、組入比率が大きいもので9%といったものも最近目にしますので、当ファンドの組入銘柄は本当に細かい!と思います。しかも、この上位10銘柄について、私自身あまり聞いたことがない銘柄です(笑)。
齋藤
実のところ、私も聞いたことがないような銘柄が次から次へと出てきます(笑)。ですので、恐らくそこがなかなか人気化しにくい、まだまだこれからの領域かなと思っています。有名な企業であれば、かなり多くのアナリストが分析していて、その情報が世の中に広まっているということですから、それらを出し抜いてリターンをより大きく取るということは、なかなか簡単ではない領域だと言えます。
山本
投資家や運用会社の人間が、その名前やビジネスモデルをよく知らなくても、投資するに値する会社というのは世界にはまだまだいっぱいある。とりわけアナリストがカバーしていない新興国には、私たちの知らないところでそんな銘柄が豊富に存在している。そういう理解でいいですよね?
齋藤
はい。逆に「ビッグデータから上がってくる銘柄を見ていると、こんなことをやっている企業がこの国にはあるんだ」といった“新興国再発見”みたいなアプローチができるはずですので、非常に面白いと思います。