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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

岸田政権の積み上げ型の大型経済政策、大した経済効果がないことが国民にバレ始めた

文=加谷珪一/経済評論家
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 日本の公共インフラは劣化が進んでおり、改修などに多額の投資が必要なのは以前から分かっていたことである。かつて公共事業は景気対策の中心に位置付けられていたが、インフラの維持すらままならない現状においては、景気対策ではなく、恒常的な予算項目として処理すべき対象といってよいだろう。意地悪な言い方をすれば、元来、必須だったインフラ支出を景気対策に付け替えただけと言い換えることもできる。

 一連の項目について整理すると、もともと支出が必要だった項目や、あらたに要求が出ている予算などを単純に積み上げ、後付けで4つの項目に分類した形になっている。最初に予算の方向性を定め、それに対応する予算項目に落とし込んだわけではないので、方向性が不明瞭になるのは当然の結果だ。

 ちなみに米国のバイデン政権は、総額1兆ドルのインフラ投資を決めたばかりであり、20日には下院が200兆円の子育て教育支援・気候変動対策の法案を可決している(上院はまだ可決していない)。200兆円の法案が通った場合、合計で300兆円の財政支出が行われるが、内容はインフラ投資や再生可能エネルギー、人工知能、教育支援、子育て支援なので、次世代社会や産業の育成に主眼を置いていることは一目瞭然である。

 コロナ対策への支出については、給付金などの直接的支援から、次世代投資を兼ねた間接支援にシフトしており、その賛否は別として方向性は明確である。

 日本は医療体制の整備やワクチン接種が遅れたことに加え、経済の基礎体力が欧米と比較すると圧倒的に低く、欧米各国と同じペースで経済再生を実現するのは難しい。そうした現実を前提にするのであれば、低所得者への給付など社会保障的な側面を強調したほうが効果的だっただろう。

 一方、米国のように今後の成長促進に舵を切るのであれば、ポイントといった場当たり的な施策ではなく、再生可能エネルギーなど次世代技術に対する思い切った投資が必要だったはずだ。

 各省の要求を積み上るという従来型の予算策定プロセスを見直さない限り、焦点がぼやけた予算が今後も立案される可能性は高い。

(文=加谷珪一/経済評論家)

●加谷珪一/経済評論家

1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『中国経済の属国ニッポン、マスコミが言わない隣国の支配戦略』(幻冬舎新書)などがある。

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