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講談社・アマゾン直接取引でも取次会社が消えない理由…出版社・書店に多大な恩恵

取材・文=A4studio
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 続いて、秦氏は日本と海外の出版業界の仕組みを比較し、こう指摘する。

「一言でいうと、国際的にみると日本の取次会社はかなり特殊な存在なんです。日本では再販制度(再販売価格維持制度)と委託制度が認められています。前者は、出版社が書籍、雑誌の価格を設定して書店で販売できる制度、後者は一定期間内であれば書店で売れ残った本を出版社に返本できる制度となっています。これらの制度が適用されるためには、出版社や書店との膨大なコネクションを持つ取次会社の存在が必要不可欠です。

 対して、欧米諸国の出版業界では、日本とは反対に直接取引を行っているところも少なくなく、特にアメリカ、イギリスなどでは再販制度が適用されていません。そのため、アマゾンは出版社と直接取引を行うことによって、本を大量に仕入れて消費者のもとへ早く、安く届けることが可能でした」

 欧米では直接取引が多いようだが、こうした仕組みが日本では広まらなかったという。

「直接取引による流通自体はそれほど珍しいものではありません。たとえばスーパーマーケットでは、直接取引と問屋を介した取引、どちらも利用して店頭に商品を並べることが普通となっています。ですから、今回の講談社の取り組みは、むしろ流通の仕組みとしてはよりノーマルな状態に近づいたともいえるのです」

目的はコスト削減ではなく配本日数の最短化?

 秦氏は、講談社が直接取引を開始した主な理由には、注文してから手元に商品が届くまでの時間を指す“リードタイム”の削減が挙げられると説明する。

「通常、書店で本を注文すると、間に取次が入るため発送までに時間がかかります。一方、アマゾンの『お急ぎ便』『当日お急ぎ便』といったサービスを利用して本を注文すれば、たいてい当日から翌日には消費者へ届きますが、古い本やマニアックな本はアマゾンや取次の物流倉庫にはなく、出版社にしか在庫がない場合が多いです。そうなると、取次が出版社まで在庫確認をしなければならず、発送まで時間がかかってしまいます。

 ですから講談社は直接取引を導入することによって、出荷ロットの小さい本の発注から納品までの時間を短くしようとしているのでしょう。今回の対象となった3つのシリーズを見てもわかりますが、要するにシリーズ内の種類は多いけれど1作品1作品が頻繁に購入されるわけではない本を直接取引にして、リードタイムを減らそうとしているのです。

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