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2800万円のコーヒー豆、落札した茨城のカフェの戦略…コロナ禍でも堅調なワケ

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

「コーヒーがマネーゲームの投機対象となっています。その豆を焙煎して味を再現できない、焙煎業者以外のブローカーが落札する時も。過去には『落札したけど高すぎて手に負えないから買ってくれ』と言われて当社が購入したこともありました」

 鈴木氏は21世紀以降のコーヒーオークション価格のグラフも作成する。熱情の一方で引いた視点も持っているようだ。

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鈴木太郎氏作成
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「本当の味を知ってほしい」。過去に落札したコーヒー豆を手にする鈴木太郎氏(筆者撮影)
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過去のオークションで落札したコーヒー豆
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パナマ・エスメラルダ農園、コーヒー果実の天日干し(写真提供:サザコーヒーホールディングス)

「こだわる」が「押し付けない」のも流儀

 サザコーヒーが消費者に支持されるのは、コーヒーにこだわりつつ、お客に押し付けないのも大きいだろう。そもそも嗜好品のコーヒーの好みは人それぞれだ。なかにはコーヒーが苦手な人、紅茶やほかのドリンクが好きという人もいる。

 同社の旗艦店「サザコーヒー本店」(ひたちなか市共栄町)では、さまざまなドリンクメニューを用意する。同社の本当の強みは「飲食+物販+オンライン」の三位一体だ。

 コロナ禍でも客足は堅調で、パンメニューやケーキなどのスイーツも人気だ。本店の正面入り口から入った奥が喫茶コーナーだが、その手前には物販コーナーがあり、多種多様なコーヒー豆やカステラなどの茶菓子、食器類や雑貨が並ぶ。

 店で飲んだコーヒーの味を気に入ったお客が、帰りにコーヒー豆を買うケースも目立つ。レジ回りに豆を置く喫茶店は多いが、サザ本店は目の前でコーヒー豆が次々に売れる。一番人気は「サザスペシャルブレンド」(200gの豆は1200円。税込み、以下同)で、「(徳川)将軍珈琲」(同1500円)も人気だ。

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本店では多種多様なコーヒー豆を販売する(筆者撮影)

老舗でも「攻めの経営」を続ける

 サザコーヒーが創業されたのは1969年で、鈴木社長の生まれた年だ。

 父の誉志男氏が家業の映画館「勝田宝塚劇場」(1942年開館、84年閉館)の一角に小さな喫茶店を開業したのは27歳の時。月刊「喫茶店経営」(柴田書店)や専門書で知識を得て、先輩店主から焙煎などの基本を学んだ。自ら焙煎や淹れ方を試行錯誤し、海外の産地にも足を運び、コロンビアに農園まで購入して、理想とするコーヒーを追究した。

 その基盤となるのが本店で、何十年も通い続ける常連客も多い。

 こうした老舗店は保守的になって衰退する例も多いが、同社は攻めの経営を温故知新でも行う。誉志男氏は2021年1月に「渋沢栄一仏蘭西珈琲物語」(200gの豆は税込1500円)を発売し、売れゆきは好調。大河ドラマ「青天を衝け」にもコーヒー器具を提供した。

 父とは違う路線を歩む太郎氏は、2020年10月「ゲイシャハンター」(100gの豆は同2000円)を発売。21年のゴールデンウィークにはスイーツとして「ジェラート」も発売した。

 若手社員を巻き込んだ販促企画も行う。そのひとつが「コーヒー豆の自動販売機」だ。物販で人気の豆を自販機で提供という、ありそうでなかった取り組みが興味深い。

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ひたちなか市の新工場の入り口に設置された「コーヒー豆の自動販売機」(右)

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