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一方で、雇調金にしても、原則として事業主経由で申請しないといけないため、休業手当がもらえないケースが続出。当初は支給上限額も低かった。随時改善はされていったものの、事業主と交渉もせずに諦めた人が多かったと伝えられている。
小規模の事業主は、休業に伴って支給された協力金によって、なんとか生き延びられたとしても、その恩恵は雇用されている人たちまでは、なかなか回らなかった。
その意味では、シフト勤務という、雇用契約で勤務日数を明示しない慣習が雇用保険のボトルネックとなっており、失業者として雇用保険から失業給付を受けられないまま困窮=セーフティーネットの網の目からこぼれ落ちる人が激増している実態が、コロナ禍で浮き彫りになったといえる。
恐ろしいのは、その実態が失業率や失業者数等の数値に、ほとんど出てこないことだ。炊き出しや食料配布で、見たこともないような長い行列ができる様子を伝える支援団体の活動レポートからは、その数値に出てこない人たちのまぎれもない現実をかいまみることができる。これが世に言う“自助”と“共助”のみで、“公助”が消えた世界ではないのか。
給付を必要以上にカットしたため、2008年のリーマンショック直後に、大量の雇用保険を受給できない層が輩出された時と似たようなことが、今回のコロナ禍でも起きている。
下の表は、2015年の雇用保険財政で、過去最高の6兆円を超える積立金が貯まった後に実施された法改正の一覧である。
リーマンショック時に施行された緊急対策を2017年に再々延長し、失業手当の給付日を30~45歳・会社都合のみ引き上げたこと、最低賃金を下回った支給下限額を修正したことなど数件(ピンク色部分)を除けば、教育訓練給付の給付率引き上げ、再就職手当の給付率引き上げ、育児休業給付の改定など、いずれも失業して困窮している層ではなく、どちらかといえば恵まれた層に対する給付を手厚くする施策(空色部分)ばかりだった。
リーマンショック直後に導入された非正規労働者に対する優遇などの暫定措置を一部廃止(灰色部分)したり、保険料を引き下げたりといった負担軽減(黄色部分)は、かなり積極的に行われた一方で、失業給付の部分は2001年以降、財政破綻危機を乗り切るために次々とカット(または支給要件厳格化)されたままである。
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