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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

新築ビル、空室率14%の異常な高さ…都心テナント解約続出&大量供給で市場悪化

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役

 縮小・解約の動きはIT、情報通信系だけではない。四大監査法人の一角であるデロイトトーマツは、千代田区丸の内にある三菱地所の基幹ビルのひとつ、二重橋ビルの2フロアの解約を発表した。このビルは1フロアが900坪超であるから、1800坪を超える大型解約である。

 だが、こうした動きはまだ「始まりの終わり」であるかもしれない。現在、多くの大規模ビルに入居するテナントの多くが、期間3年から6年程度の建物定期賃貸借契約を結んでいる。この契約は期限を迎えない限り、条件を変更することが基本的にはできない仕組みになっている。つまり、今すぐにオフィス面積を縮小、解約したくても、契約期限が到来しなければ具体的な行動に移せない状況にある。

 コロナ禍が始まったのが1年半前である。この期間中に期限を迎えた大型テナントは、オフィス面積の縮小・解約に舵を切れたが、その他の多くのテナントが、膨大な解約予備軍になっている可能性もあるのだ。

 もちろん現状は期限を迎えるまでは、契約を継続しなければならない立場にあるので、具体的にビルオーナーと交渉しているテナントの数は少ない。こうした表面的な現象だけを根拠に「うちには影響はない」と嘯(うそぶ)いているビル事業関係者は多いが、内心ではこれから起こるかもしれない環境変化に心休まらない日々を過ごしていることであろう。

大規模オフィスが続々竣工

 影響は今後オープンする新築ビルのテナント募集にも出始めた。21年10月の空室率は6.47%だが、これを竣工6カ月以内の新築ビルについてみれば、空室率は14.03%におよぶ。前年同月は2.13%だから、その変貌ぶりは瞠目に値する。浜松町に再開発される世界貿易センタービルも今のところ2割程度の空室があるという。また東京駅八重洲口にオープンした常盤橋タワーも満室オープンとはならなかったようだ。

 一過性であるはずのコロナ禍が、思っていた以上に収束に手間取ってしまったことは業界としては大誤算だ。コロナ禍による緊急事態宣言の発令が、昨年の4月から6月の3カ月だけで終わり、SARSや新型インフルエンザなどの騒動と同じく収束していたならば、おそらくテレワークは臨時避難的働き方と位置付けられ、オフィスは活況を取り戻していたはずだ。だが、世の中が変わるときというのはこうしたものだ。

「え、そんなはずはない。なに、今に元に戻るさ。オフィスに人が来なくなるなんてありえない。だって今までだって、みんな来てたじゃないか」

 政府の後手後手のコロナ対策と、どこか似ているような気もする。23年には都内は大規模オフィスが続々竣工を迎える。来年から再来年にかけて契約期限を迎える大型テナントの面積縮小・解約がだらだらと続くなか、迎える23年の大量供給問題。

「これまでも2003年問題とか13年問題はあったけど、みんな乗り越えたさ。だから平気」などと楽観していると、世の中はある日大きく変わった姿として業界関係者の目の前に現れるかもしれない。変化を見通すことが今、重要なのである。

(文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)

●牧野知弘(まきの・ともひろ)

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。

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