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スズキ、100万円台のEV販売へ…日本の自動車業界全体の救世主に

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 スズキの取り組みは他の自動車メーカーにとっても重要だ。同社はトヨタが中心となって形成した商用車のコンソーシアムに参加している。コンソーシアムに参加しているいすゞは、航続距離の長いEVトラックの実用化にめどをつけたようだ。その中でスズキが低価格の小型EVの実用化を早期に実現すれば、自動車メーカーなどがより使い勝手の良いEVを開発し、世界市場に投入する可能性は高まる。EVシフトによって世界の自動車産業で異業種を巻き込んだ合従連衡が進んでいる状況下、スズキには自動車業界でのオープンイノベーション加速の原動力となってもらいたい。

想定されるスズキのEVシフト戦略

 スズキのEVシフト戦略は、大きく2つの要素から構成されると考えられる。

 一つ目が、スズキのコアコンピタンス=強みである小型車の製造技術の活用だ。同社は、軽量化、耐久性、安全性の向上を実現する製造技術に磨きをかけ、“安くて、性能の良い自動車を作る”という強みを発揮してきた。EV生産ではコストの3~4割をバッテリーが占める。車体の軽量化技術、原価低減を支えたサプライヤーとの関係は、EVの価格引き下げと航続距離の延長などに欠かせない。その点で、軽自動車分野の製造技術が応用できる部分は多いだろう。

 二つ目が、インドの労働コストの低さだ。インドの一人当たりGDPは中国の約5分の1の水準だ。インド政府は製造業の育成によって国内の雇用基盤を強化し、さらなる経済成長を実現したい。その環境はスズキがインドで現地のニーズに合ったEVを開発、生産し、世界戦略につなげるチャンスだ。新型コロナショックの発生によってシェアは低下したが、スズキはインドの自動車市場で47.7%(2020年度実績)のトップシェアを誇る。スズキがインドの経済界、政府などと構築してきた関係などを活かして世界的に競争力のあるEVを生み出すことは可能だろう。その上で、インドで生産したEVをスズキが日本国内に導入する展開も考えられる。

 ただし、以上の事業戦略を進める上での課題もある。

 まず、インド市場においてスズキは競争の激化に直面している。近年、韓国の現代自動車やインドの自動車メーカーの成長が著しい。その結果、インド自動車市場でのスズキのシェアは徐々に低下している。それに加えて、スズキはバッテリーの生産、あるいは調達体制を短期間で強化しなければならない。インドでは中長期的な車載用などのバッテリー需要増加期待が高く、マヒンドラ・アンド・マヒンドラは韓国のLG化学と車載バッテリーで提携した。インドにてスズキは東芝やデンソーとHV向けのバッテリー生産を目指しているが、中国や韓国のバッテリーメーカーの事業展開スピードは速く、投資規模も大きい。スズキは原材料を含めたバッテリー、車体生産のカーボンニュートラルな生産体制の構築にも取り組まなければならない。

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