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スズキ、100万円台のEV販売へ…日本の自動車業界全体の救世主に

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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重要性高まる組織の集中力引き上げ

 スズキに求められる取り組みは、加速化するEVシフトやインドでの競争激化など、熾烈さを増す事業環境の変化にしっかりと対応できる体制を整備することだ。現在、スズキの組織的な集中力は不安定化し始めている可能性がある。リコール問題はその兆しに見える。

 その背景には、複数の要因がある。まず、環境変化の加速化によって自社の先行きへの不安心理が高まっていることが考えられる。その一方で、組織の内部にはこれまでの発想に基づいて自動車の生産を続ける考えも強く残っているだろう。その結果として、現場の集中力が低下し、リコールにつながった可能性がある。

 今後、世界全体でEVシフトは加速する。既存の事業運営体制に固執する心理が強まれば、スズキの変化への対応は遅れ、困難になる可能性がある。半導体調達の遅れも不確定要素だ。

 スズキ経営陣は、個々人の意思を統率して集中力を引き上げ、組織を一つにまとめなければならない。そのためには、経営トップが長期の視点で自社が向かうべき方向を明確に組織全体に示さなければならない。それが、組織全体の意識を一つにまとめ、脱炭素などの変化に対応して長期の存続を目指すことにつながる。具体的に考えると、国内やインドでのEV販売時期の前倒し、さらなる価格引き下げ、再エネを用いた充電インフラ整備などに取り組む意義は高い。

 問題は、事業運営のスピードを引き上げつつ新しい取り組みを増やすと、変化のスピードについていくのを難しいと感じる人が増えることだ。組織内の動揺を解消するために、スズキは最先端分野での人材教育を強化し、内燃機関の開発に取り組んできた人が、再エネ利用や二酸化炭素の回収や再利用など(CCUS)に従事するなど、個々人が能動的に変化に臨み、それを成長のチャンスにつなげようとする経営風土を醸成しなければならない。経営陣が、変化への心理的な抵抗感を解消し、個々人が成長期待の高い分野、潜在的な需要が見込まれる技術の研究と開発に没頭する環境を整備することは、スズキの成長だけでなく、日本経済の活力向上に必要だ。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

●真壁昭夫/法政大学大学院教授

一橋大学商学部卒業、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学大学院(修士)。ロンドン証券現地法人勤務、市場営業部、みずほ総合研究所等を経て、信州大学経法学部を歴任、現職に至る。商工会議所政策委員会学識委員、FP協会評議員。

著書・論文

『仮想通貨で銀行が消える日』(祥伝社、2017年4月)

『逆オイルショック』(祥伝社、2016年4月)

『VW不正と中国・ドイツ 経済同盟』、『金融マーケットの法則』(朝日新書、2015年8月)

『AIIBの正体』(祥伝社、2015年7月)

『行動経済学入門』(ダイヤモンド社、2010年4月)他。

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