ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
大学の知的資源を利用したガバナンスを
基本的なことは、大学の現状を踏まえて、何よりも教育・研究を担う大学教員の意見を最大限尊重し、大学経営に反映させていくことである。
実は日大でも、そのような教員の活動があった。執行部の責任を追及する「新しい日本大学をつくる会」である。しかし、法的資格を問われ、裁判でも門前払いの結果となった。教職員労組などとも連携して、内部からの声を大学経営に反映させるルール化を進めるべきである。
それには徹底した情報開示が必要だ。利害関係者でもある理事や評議員のみならず、全教職員はもちろん当該大学生やその保護者、OBやOGなどにアプローチできるように情報を開示すべきだ。
確かに、有識者会議の提言にあるように評議員をオール学外メンバーにして権限強化を図ると、日大のような理事長専横は防げる可能性は高いが、大学の教育研究の向上を図れるかというと、心もとない。
社外取締役を多数登用し、ガバナンス重視の見本と言われた民間有名企業で続く不祥事を見ればわかるように、利益追求の企業風ガバナンスでも実効性は確保できていないのが現実だ。
大学のガバナンスを実現するベースには、何よりも教職員の責任感と自覚があり、それを支える学生とOBやOGの共感がなければならない。そうでないと、器だけ作っても機能しないことになる。自学の知的資源をガバナンスにも生かすべきである。
(文=木村誠/教育ジャーナリスト)
●木村誠(きむら・まこと)
早稲田大学政経学部新聞学科卒業、学研勤務を経てフリー。近著に『「地方国立大学」の時代–2020年に何が起こるのか』(中公ラクレ)。他に『大学大崩壊』『大学大倒産時代』(ともに朝日新書)など。