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キヤノン、世界初のSPADセンサー開発、量産へ…世界の画像処理技術に革新

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授

 キヤノンは新しい回路技術を用いることによって感度領域を大きく広げ、SPADセンサーの多画素化を実現した。新聞報道によると、2022年には320万画素のSPADセンサーの量産が目指されているようだ。課題を克服する画像処理関連の製造技術の確立と、それに磨きをかけることこそが、キヤノンの強みだ。その技術を用いることによって、キヤノンはこれまでにはない画像体験という需要を創出しようとしている。

期待される画像処理のイノベーション

 SPADセンサーの実用化、多画素化の実現によって、キヤノンは様々な分野でのイノベーション発揮を目指している。

 その一つに、自動車分野がある。光を用いて物体の検知と距離の計測を行う技術は、自動車の自動運転技術の実用化や高度化に不可欠な技術として重要性が高まっている。キヤノンが開発したSPAD イメージセンサーは100ピコ秒(ピコは1兆分の1)の間隔で画像をとらえることができ、高速に移動するモノを撮影し、距離を測定するために欠かせない。その技術は自動運転技術の向上に大きく貢献するだろう。

 キヤノン以外にも、わが国ではソニーやニコン、デンソーなどが車載センサー分野で製造技術を磨いている。キヤノンは車載分野でのSPADセンサー需要を取り込むために、自動車メーカーや、自動運転のソフトウェア開発を行う企業などとの提携を強化するだろう。それによって、自動運転を支える画像処理センサメーカーとしてのキヤノンの競争力は一段と高まる可能性がある。

 また、SPADセンサーの普及は、メタバースを加速させる要素にもなるだろう。仮想空間を意味するメタバースでは、ネットワーク上の3D空間で人々が交流する。一つの着眼点として、わたしたちが認知してきた実社会の光景、あるいは、実際に起きているが目には見えなかった自然界の現象などがメタバースの世界で再現されれば、これまでには実現が難しかったダイナミックかつ鮮烈なゲームや映画などの体験が創出されるだろう。そのためにキヤノンが実現したSPADセンサーの多画素化技術がどういった威力を発揮するかが興味深い。

 そのほかにも、SPADセンサーの活用が期待される分野は増えている。具体的には、デジタルカメラの機能向上、企業の生産現場で用いられる製造装置の稼働状況のモニタリングや異常検知、トンネルなどインフラの保守、医療分野での画像診断、宇宙開発、農業分野でのデジタル技術の導入加速などがある。

キヤノンが目指す画像処理技術の高度化

 今後の展開としてキヤノンに期待するのは、世界トップの画像処理技術に関する研究開発を進め、新しいセンサーなどの製造技術を確立することだ。

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11:30更新
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