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キヤノン、世界初のSPADセンサー開発、量産へ…世界の画像処理技術に革新

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授

 キヤノンの事業運営を振り返ると、同社はカメラなど光学関連の製造技術からスタートし、プリンター、デジタルカメラ、医療分野での画像診断装置、およびCMOSやSPADセンサーの開発など、一貫してより高精度な画像処理の技術を磨いてきた。つまり、キヤノンは画像処理に関する新しい取り組みを強化することによって長期存続を目指す企業だといえる。

 さらには、光学や画像処理分野でのノウハウなどを活かして、キヤノンは半導体の回路を形成する露光技術の分野でもイノベーションを目指している。それが、ナノインプリントリソグラフィ技術だ。最先端の半導体製造では極端紫外線(EUV)を用いて回路を形成する。EUV露光装置を生産できるのは、オランダのASMLのみだ。事実上の独占であるため、装置は高額だ。また、大量の電力も消費する。

 その一方で、キヤノンが取り組むナノインプリントリソグラフィ技術では、シリコンウエハにハンコを押し付けるようにして回路を形成する。工程数が少ない分、半導体メーカーの設備投資負担は少なくて済むと期待されている。半導体製造装置分野でのより微細な製造技術の実現は、キヤノンの画像処理センサーの競争力向上にもつながるだろう。

 キヤノンは海外では米国や中国、韓国などの企業がSPADセンサーの研究開発を強化し、画像処理分野でのシェア獲得に取り組んでいる。競争の激化に対応して生産性を高めるためには、常に新しいモノやサービスを生み出すことが欠かせない。反対に、新しい需要を生み出すことが難しくなると、商品はコモディティー化し、価格競争に巻き込まれる。

 キヤノンにはあきらめることなく、他社に先駆けて新しい画像処理を可能にする技術を追求してもらいたい。当面の注目ポイントは、同社が競合企業に先駆けてSAPDセンサーなど高付加価値型の製品の市場投入を進め、新しい収益源を確立することだ。その上で、どのような新しい機能を持つ画像処理技術の開発に同社が獲得した資金を再配分するかに注目が集まるだろう。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

●真壁昭夫/法政大学大学院教授

一橋大学商学部卒業、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学大学院(修士)。ロンドン証券現地法人勤務、市場営業部、みずほ総合研究所等を経て、信州大学経法学部を歴任、現職に至る。商工会議所政策委員会学識委員、FP協会評議員。

著書・論文

『仮想通貨で銀行が消える日』(祥伝社、2017年4月)

『逆オイルショック』(祥伝社、2016年4月)

『VW不正と中国・ドイツ 経済同盟』、『金融マーケットの法則』(朝日新書、2015年8月)

『AIIBの正体』(祥伝社、2015年7月)

『行動経済学入門』(ダイヤモンド社、2010年4月)他。

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