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江川紹子の「事件ウオッチ」第194回

江川紹子が斬る【森友裁判強制終結】…国の「認諾」は真相解明逃れであり、非常に不道徳

文=江川紹子/ジャーナリスト
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国側が知られたくない事実を明らかにされるのを避けるために税金が使われているのではないか

 赤木雅子さんは、国が裁判の認諾を明らかにする2カ月あまり前、記者会見で岸田文雄首相に宛てて直筆の手紙を送ったことを明らかにした。岸田氏が「特技は人の話をしっかり聞くこと」と述べたことに触れ、「私の声も届くはずだし、聞いてくださるという感覚がある」と期待を寄せていた。

 それだけに、今回の認諾には、失望と裏切られた怒りが大きいだろう。記者会見やメディアのインタビューでは、いつも穏やかな語り口が印象的な雅子さんが、国の対応を「不意打ちでひきょうだ」「ふざけるなと思った」と強い言葉で非難した。

 組織を挙げての公文書改ざんがどのような経緯でなされたのか、国が再調査を拒んでいる以上、裁判で詳細が明らかにされることを期待していた国民も少なくない。その期待もまた、裏切られることになった。

 しかも、支払われる賠償金は、いずれも国民の税金が原資だ。国の違法を認め、原告の真相解明の求めに誠実に応える趣旨であれば、訴訟の負担から早く原告を解放する「認諾」にも意味はある。しかし、すでに挙げたケースはいずれも、そうした趣旨ではなく、国側が知られたくない事実を明らかにされるのを避けるために税金が使われているのが実態ではないか。

 特に、今回の赤木さんの死を巡る国賠訴訟は、請求額が1億7000万円と高額だ。にもかかわらず、事実経緯が明らかにされたうえで、原告が求めた金額が適切であるか裁判所が判断をするプロセスが、まるで奪われてしまった。司法をも愚弄する行為だろう。

 森友問題は、国有地という国民の財産が、一学校法人に格安で払い下げられたのではないか、という疑惑で始まった。国民の財産を適切に管理すべき財務省の不明朗な対応が発端である。国は、この問題から何も教訓を学んでいないのではないか。

 実に不道徳で恥ずべき対応といわざるを得ない。

 このような対応を避けようとすれば、国がとうてい認諾できないような金額を請求するしかなくなる。たとえば、赤木さんのケースで、請求金額が50億円という法外な額であれば、さすがに国も認諾はできなかったろう。

 しかし、裁判を起こす時には手数料がかかる。その金額は、請求額が大きいほど高くなる。1000万円なら5万円で済むが、1億円であれば32万円。10億円だと302万円となり、50億円となると1102万円も必要だ。これは、とても個人で負担できる額ではない。赤木さんの妻のように、すでに大きなダメージを受けている者が、さらに大きな負担をしなければ真相解明のための裁判も起こせない、というのでは、いくらなんでも正義に反するのではないか。

 訴訟の当事者から国は降りてしまったが、佐川氏を被告とする裁判は継続する。また、ほかにも文書開示を巡る国を相手にした裁判がある。こうした訴訟において、裁判所はできる限り関係者の証人尋問を行い、真相解明に努めてほしい。それが、今後同じような真相解明逃れの「認諾」を防ぐ道でもあると思う。

 国が、国民の金を使って、裁判から逃れようという不埒な行為を、司法は許してはならない。

(文=江川紹子/ジャーナリスト)

●江川紹子(えがわ・しょうこ)
東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か – 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。

江川紹子ジャーナル www.egawashoko.com、twitter:amneris84、Facebook:shokoeg

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