ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal

そこで谷舗氏はひらめいた。一般的なパン屋さんには「焼きたて」が存在しないことを。他の例えば総菜店では、コロッケ、メンチカツなどに「揚げたて」があって、その言葉が大きな付加価値となっていた。
谷舗氏の新しい事業のキーワードである「日常的で説明が要らない」「古くて新しい」という商品として「食パン」が定まるようになった。
これがきっかけとなり「食パン専門店」の存在を知った。その店に通い同じ食パンを食べてみるのだが、その味がいつもと違うことがあった。それがなぜかをパンの業界関係者に尋ねたところ「職人さんがつくっているからだ」という。
「職人さんはプロだから、小麦粉、砂糖、塩、バターといったものを勘と経験で調合する。それによってパンの味が変わることがある」
谷舗氏は「それでは食パン屋のFCはできない」と考えた。そこで、その知人に「パンを規格化することができないか」と尋ねたところ「できる」という。しかも、研修を受けることによって誰でも同じ品質のものができるという。
そのポイントは「食パン専用ミックス粉」であった。これに製造工程に沿って水やイースト菌などを入れてミキシングしマニュアルに沿って焼成すると常に安定した品質の食パンができあがる。谷舗氏はこの仕組みによって食パンのFC化が可能になると判断し、焼きたて食パン専門店「一本堂」をオープンした。それが冒頭で紹介した大阪の店舗である。1斤の価格は210円。同じような商品はスーパーで150円程度であったが、「焼きたて」によって差別化した。翌14年4月、FC1号店として東京都三鷹市に出店し今日の成長の足掛かりとなった。

大手製粉業者がもたらした飛躍のチャンス
「一本堂」が飛躍したのは17年のこと。現在同社に食パン専用ミックス粉を納品している大手製粉業者と出会ってからである。これによってミックス粉の品質は安定するようになり、商品のバラエティは広がるようになった。
現在の商品は大きく3つのカテゴリーに分かれている。まず、「プレーン系」として1斤300~430円(税込、以下同)、次に「デザート系」として400~540円、さらに「高機能系」として370~450円と、全部で約30品目をラインアップしている。
「高機能系」のなかに最近急速に注目を浴びてきている低糖質の商品をラインアップしている。これは17年に商品化したものだ。低糖質化のポイントは大豆粉で、これによって「一本堂」のプレーンの商品に対して糖質50%オフとなっている。この商品を求めてやってくる遠方からのお客も存在し安定した量が売れ続けているという。
また、「一本堂米粉食パン」650円も加わるようになった。これは北海道当別町産の「ななつぼし」の米粉、国産小麦粉、北海道産豆乳をしている。一本堂としては「しっかり朝食」という文言でアピールしているが、こだわりがはっきりとしていることから、根強い人気が定着するようになった。