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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

音楽の世界もアジアの時代が到来…欧米のオーケストラ、コンサートも東洋人が席巻

文=篠崎靖男/指揮者

 オーケストラのコンサートマスターになるのは、飛び抜けた才能だけでなく、国が裕福でなければ、留学以前に音楽教育どころではありません。僕も30年近く世界を巡りながら指揮者をしていますが、優秀な音楽家が輩出されることは、彼らの母国の成長ぶりを反映しているように思います。日本がバブル経済にわきたっていた頃は、海外でのアジア系ソリストといえば、とにかく日本人でした。その後、韓国系ソリストがどんどん出てきて、今では中国から多くの優秀なソリストが輩出されています。

 ちなみに、昨年ポーランドで行われたショパン国際ピアノコンクールで第2位を受賞した反田恭平さんが、今もなお世間の話題をさらっていますが、第1位はカナダ国籍ではありますが、中国系ピアニストのブルース・シャオユー・リウさんです。「反田さんのほうが優勝にふさわしいと思う」といった意見も多くありますが、いずれにしてもヨーロッパの三大ピアノコンクールの1位と2位が東洋人というのは、それだけでもすごいことだと思います。

音楽の世界もアジアの時代に突入

 そんな中国ですが、クラシック音楽の分野にも力を注いでいます。そのひとつをご紹介すると、かなり大がかりなピアノコンクールを開催しているのです。

 ショパン国際コンクールも優勝賞金4万ユーロ(約520万円)という驚くべき額ですが、実は世界で一番賞金が高額なのは、中国国際音楽コンクールです。その優勝賞金額はなんと15万ドル(約1740万円)。続いて高額なのも中国で、賞金額10万ドル(約1160万円)の上海アイザックスターン・ヴァイオリン・コンクール。3番目はカナダ、4番目に韓国とシンガポールの音楽コンクールが並びますが、残念なことに日本のコンクールはトップ10から外れてしまっています。

 もちろん、コンクールは賞金稼ぎ目的ではなく、受賞以降の活動のきっかけが目的ですから賞金額は本質ではありませんが、アメリカでの中国系、韓国系、日系コンサートマスターの比率を考えると、なんだか比例しているようにも思ってしまいます。

 そんななか、世界的指揮者ズービン・メータは別として、インド系アーティストはまだまだこれからです。しかし、これから活躍するであろうインド系音楽家が出てきているところを見ると、経済はもとより音楽界においても、日本のライバルは欧米よりアジアになっている気がします。

 アジアのオーケストラも、香港フィルハーモニー管弦楽団は世界的にも有名ですし、上海、北京、シンガポール、マレーシア、そして台頭めざましい台湾のオーケストラ、日本人指揮者の本名徹次さんが長い間育てあげているベトナム国立交響楽団と、まだ日本のオーケストラのレベルにまで至っていなくとも、音楽の世界は、これからは日本を含めたアジアなのだと思わせる時代に入っているのです。

(文=篠崎靖男/指揮者)

音楽の世界もアジアの時代が到来…欧米のオーケストラ、コンサートも東洋人が席巻の画像2

●篠﨑靖男
 桐朋学園大学卒業。1993年アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールで最高位を受賞。その後ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクール第2位受賞。
 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後、英ロンドンに本拠を移してヨーロッパを中心に活躍。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、BBCフィルハーモニック、ボーンマス交響楽団、フランクフルト放送交響楽団、フィンランド放送交響楽団、スウェーデン放送交響楽団など、各国の主要オーケストラを指揮。
 2007年にフィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者に就任。7年半にわたり意欲的な活動でオーケストラの目覚ましい発展に尽力し、2014年7月に勇退。
 国内でも主要なオーケストラに登場。なかでも2014年9月よりミュージック・アドバイザー、2015年9月から常任指揮者を務めた静岡交響楽団では、2018年3月に退任するまで正統的なスタイルとダイナミックな指揮で観客を魅了、「新しい静響」の発展に大きな足跡を残した。
 現在は、日本はもちろん、世界中で活躍している。エガミ・アートオフィス所属
オフィシャル・ホームページ http://www.yasuoshinozaki.com/

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