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藤和彦「日本と世界の先を読む」

安定国・カザフスタン「まさかの政変」、世界的なエネルギー危機の懸念…米ロ対立も

文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー
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原油価格が上昇

 資源大国であるカザフスタンのまさかの「政変」騒ぎにエネルギー市場も反応した。カザフスタンの原油生産量は日量約160万バレルであり、OPECとロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスのメンバーだ。これまで生産が中断されることはほとんどなかったカザフスタンの混乱を材料に、米WTI原油先物価格は一時1バレル=80ドル台に上昇した。

 カザフスタンの原油生産を支えているのは欧米の石油メジャーだ。カザフスタン最大のテンギス油田(日量70万バレル)の開発資金の5割を負担した米石油大手シェブロンは6日、「生産部門の影響はないが、物流での混乱からテンギス油田の生産量を一時的に減少させた」ことを明らかにした。カザフスタンにはこのほかカシャガン油田などの大油田があり、エクソンモービルやロイヤル・ダッチ・シェルなどが多額の資金を投じているが、「現時点で生産に支障はない」としている。

 カザフスタンは天然ウランの供給大国でもある。「脱炭素」の動きが進むなかで原子力発電への期待が高まっていることもあって、天然ウラン価格は1ポンド=45.5ドルに上昇し、昨年11月30日以来の高値となった。相場が急騰したことから、世界の天然ウラン生産量の2割超のシェアを誇るカザフスタン国営企業カザトムプロムは6日に急遽会見を行い、「国内の混乱による生産や輸出への影響はない」とコメントした。

 これまでのところ、世界のエネルギー市場が大きく動揺することにはなっていないが、今後の事態の推移を見守る必要がある。心配なのはカザフスタンの問題が重なり、ロシアと欧米諸国の間の緊張が一層高まることだ。

天然ガス価格高騰リスク

 トカエフ大統領は「カザフスタンは外国で徹底的に訓練を受けたテロリストの攻撃を受けたスケープゴートとなった」と今回のデモをテロだと非難した。ロシアメディアも「背後に米国がいる」と主張している。彼らの念頭にあるのは「2014年2月に起きたウクライナ政変」ではないだろうか。

 2014年2月、ウクライナの首都キエフで治安当局とデモ参加者の間で衝突が起き、その結果、国民の人気を失いつつあったヤヌコビッチ大統領(当時)が失脚、親欧米政権が誕生した。当時、米国政府は関与を否定していたが、英紙ガーディアンなどは「ヌーランド米国務省次官補(当時、現在の米国務省次官)などがウクライナの政変に積極的に関与していた」と報じていた。

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23:30更新
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