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江川紹子の「事件ウオッチ」第195回

【江川紹子が危惧する報道と権力の“距離”】読売新聞と大阪府の連携、立憲民主の資金提供

文=江川紹子(ジャーナリスト)
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大阪府との協定直後の、読売新聞による“吉村知事ヨイショ記事”が招いた多くの憶測

 報道機関の独立性が大切なのは、それが報道への信頼に直結するからだ。報道機関に所属する人たちが、いくら「我々は独立性を守っている」と力んでも、それが本当なのかは、外部の読者・視聴者からは確認できない。だからこそ、外形的にも独立性が担保されている、とわかることが必要だ。

 この協定が結ばれた3日後の12月30日、読売新聞オンラインにこんな見出しの記事が掲載された。

吉村洋文知事、休日の筋トレ姿を公開! たくましい筋肉に黄色い声殺到「カッコ良すぎ」「キャー!」〉

 吉村知事が自身のインスタグラムで、筋トレ中の姿を公開したところ、フォロワーたちから「吉村さんカッコ良すぎます」「どこまでも男前やん」「カッコイイ」「あーもう好きすぎる」「キャー! キャー! やっぱり鍛えてはったんですね」等々の“黄色い声”が送られている、との内容だった。

 読んでいて恥ずかしくなるような、あからさまな提灯記事である。さすがに読売新聞の記者が書いた記事ではなく、系列のスポーツ報知が配信した記事を転載したものだ。とはいえ、それをわざわざ自社の公式ニュースサイトに掲載するほどのニュース性がどこにあると判断したのか、理解に苦しむ。

 私自身は、このネット記事が包括連携協定と関係しているとは思わない。吉村知事については、大阪のメディアを中心に、もともと“ヨイショ記事”が多く(そのこと自体は問題だと考えるが)、これもそのひとつだろう。だが、協定締結直後とあって、読売新聞と大阪府の近さを示すものではないか、との憶測も呼んだ。

 それを余計な憶測と無視していてよいのだろうか。私は、こういうことの積み重ねが、じわじわと報道機関への信頼を浸食していくのではないか、と懸念する。それでなくても、マスメディアに対する人々の信頼が揺らいでいる時代である。真偽不明の情報が飛び交う今、これ以上、報道機関に対する信頼が損なわれれば、人々は何をよりどころに判断をするのかわからなくなり、民主主義は根底から瓦解しかねない。

 だから、報道機関は「我々は独立性を担保している。大丈夫」と自信を持つだけではなく、外から見ても「確かにいかなる権力からも独立している」と思われる「独立性らしさ」も保たれている必要がある、と思う。

 ところが、このように行政との包括連携協定を結んでいるのは、読売新聞には限らないようだ。1月4日付け日刊スポーツによると、2016年に宮崎県都城市と宮崎日日新聞が同様の提携をして以来、2018年には横浜市とTBSなど、すでに多くの自治体とメディアが包括協定を結んでいる、という。

 行政と連携することで、一定の収益が見込めるという経営的な要請もあるのかもしれない。しかし、「独立性」や「独立性らしさ」を犠牲にしかねないこのような協定が、長い目で見てメディアにとってプラスなのか、経営陣はここで熟考する必要があるのではないか。

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11:30更新
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