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舘内端「クルマの危機と未来」

トヨタ「2030年にEVを350万台販売」は非常に無理があると考えられる根拠

文=舘内端/自動車評論家
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 さらに義務台数を超えてEVが売れるケースも考えられる。理由は2つで、1つは機能面の向上だ。まずEVのコストだが、電池コストの低減と生産台数の増大、生産性の向上によって大幅に下がることが十分考えられる。たとえばアウディは2年ほどでエンジン車と変わらない販売価格になるといっている。さらに充電インフラが急速に整備される。しかも充電器の性能アップで充電時間が10分以内に縮まる。あらゆる場所で待たずに十分な充電が可能になる。高速道路では走行中の充電も可能になるかもしれない。

 2つ目は、一度EVのユーザーになると次もEVにするというEVの圧倒的な魅力と扱いやすさだ。そして、消費者の心理である。近代資本主義の市場では、新しいものが魅力的に映る。そして時代の最先端の象徴となる。人々はある値以上にEVが増えたとき、雪崩を打ってEVを購入するだろう。そして、環境意識の高まりだ。これまでとは逆にエンジン車に乗るには相当の覚悟が必要になるに違いない。

 こうしたことに加えてEVの価格がエンジン車よりも安くなることも大いに考えられる。それは中国で早くも50万円以下の軽自動車サイズのEVが売られ、大人気だということからも十分に想像できる。30年にEV爆発が起きていると、計画した生産台数では間に合わないことも十分に考えられる。そうしたケースにトヨタはどう対応するかは、もちろん明らかにされていない。

(文=舘内端/自動車評論家)

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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