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世界的塗料メーカー、日本ペイントの経営戦略研究…自動車分野で高めた技術を多角化

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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経営陣に期待する事業運営の効率性向上

 今後の展開として日本ペイントに期待することは、コスト削減と新商品の開発のスピードを高めて、より効率的に事業を運営することだ。そのために経営陣は、商慣習をはじめ日本の常識から脱却しなければならないだろう。地域とセグメントごとの先行き不確定要素に加えて、日本ペイントが感染再拡大を背景とする世界的なサプライチェーンの寸断深刻化に対応するためにもコスト削減を急ぐ重要性は高まっている。

 過去には海外での買収をめぐって見解が食い違うなど、ウットラムとの利害が常に一致しているわけではない。その一方で、過去の買収によって日本ペイントの事業体制は拡大(肥大化)した。事業運営の効率性を高めて総資産利益率などを上昇させるためには、各国の生産能力を見直し最も効率的に最終需要地に製品が届けられる体制の確立は急務といえる。状況によっては、国内外で機能が重複する生産設備の売却が検討される可能性もある。

 それに加えて、日本ペイントには新しい製品創出も期待したい。現在の世界経済の環境変化は、新しい取り組みを増やすチャンスだ。世界的なEVシフトによって自動車の生産はすり合わせ技術に依存した体制からデジタル家電のようなユニット組み立て型に移行する。

 また、経済成長率の減速が鮮明な中国では低価格帯のEVを自分の好みにあわせてカスタマイズする個人が増えていると聞く。そうした需要を取り込むために、日本ペイントは自動車の内装向けフィルム分野に進出した。その真意は、塗装技術と素材技術の新しい結合を目指すことにあると考えられる。自動車塗装で磨いた技術を建築用に応用し、さらには自動車内装などに欠かせない素材創出に結合することは、同社の持続的な成長を支えるだろう。

 今後、米国での利上げなどによって世界の金融環境は大きく変化し、各国の株価が下落するリスクは高まっている。時機を逃さずに海外企業などを買収してシェアを拡大するために、日本ペイント経営陣がコスト削減と新しい需要創出に集中して事業運営の効率性を高め、しなやかに環境変化に対応できる組織を構築することを期待したい。

真壁昭夫

(文=/法政大学大学院教授)

真壁昭夫/多摩大学特別招聘教授:外部執筆者

一橋大学商学部卒業、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学大学院(修士)。ロンドン証券現地法人勤務、市場営業部、みずほ総合研究所等を経て、信州大学経法学部を歴任、現職に至る。商工会議所政策委員会学識委員、FP協会評議員。
著書・論文
『仮想通貨で銀行が消える日』(祥伝社、2017年4月)
『逆オイルショック』(祥伝社、2016年4月)
『VW不正と中国・ドイツ 経済同盟』、『金融マーケットの法則』(朝日新書、2015年8月)
『AIIBの正体』(祥伝社、2015年7月)
『行動経済学入門』(ダイヤモンド社、2010年4月)他。
http://tgs.tama.ac.jp/faculty/makabe-akio

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