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サウナブームの裏で“本当にあったヤバい話”…入れ墨の客に注意した結果

文=織田淳太郎/ノンフィクション作家
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 狭いサウナ室で4人の大男が、車座を組むように向き合っていた。首から足首まで文字通りの総入れ墨である。その姿態にまず圧倒されたが、私が入ってきたときに向けられた射るような鋭い眼光にも立ちすくんだ。

 私は隅の方に身を小さくして座った。入れ墨4人組が、時折私をうかがいつつ、顔を寄せ合って何かを話し合っている。

 野球強豪校の名前が聞こえてくる。「ハンデ」「1.2(倍)」などという言葉も、小さく耳に届いてきた。時期は夏の真っ盛り。ちょうど高校野球の甲子園大会が始まる頃だった。

(野球賭博の元締めかも……)

 そう思うと、恐ろしくなって、居ても立ってもいられなくなった。私は満足な発汗を待つことなく、サウナ室を出ると、そのまま店を出て行ってしまった。

返金なしで強制退店させられた若者

 サウナには入れ墨の人が多く訪れる。私がそういう感覚を抱くようになったのは、前述の経験もさることながら、都内の歓楽街のサウナで入れ墨客をよく見かけたからである。「入れ墨お断り」の看板があっても、彼らは足を大きく広げ、堂々と汗を流していた。

 もちろん相手が凶暴そうか否かを見極めてからだが、血気盛んだった若い頃の私は、何度か彼らにこう注意したことがある。

「入れ墨の人は、ここダメなんじゃないですか?」

 その結果、あわや殴り合いに発展しかけたこともあれば、逆に「私はもう堅気になりました。どうか堪忍してくださいね」と平身低頭されたこともある。確かに、入れ墨があるから凶暴というわけではなく、入れ墨がなければおとなしいというわけでもない。

 プロ野球などのスポーツ中継を観ていると、時折違和感を覚える。タトゥーを入れた外国人選手が目立つ半面、日本人選手のタトゥーは見かけない。歴史や文化の違いから、入れ墨やタトゥーに対する意識が日本と外国ではまるで異なる。偏見と感じるケースすらある。

 観光客相手のサウナ付き温泉施設は、ここ数年「入れ墨入店お断り」を掲げるところが増えてきた。ある田舎町のサウナ付き温泉施設は、玄関先に「入れ墨の入浴不可。入浴後に発覚した場合は、即退去。入浴料金の払い戻しはなし」という旨の看板を大きく掲げるなど、入れ墨対策を徹底している。だが、やりすぎの感もなくはない。

 あるとき、風呂から上がった私が服を着ていると、2人の若者が脱衣場に入って、服を脱ぎ始めた。その1人の左上腕部にあったのは、よく見なければ気づかない小さなタトゥー。どこにでもいるごく普通の若者で、おそらく単なるファッション感覚で彫ったものだろう。

 彼にとって不運だったのは、従業員がその場にいたことだった。

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17:30更新
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