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サウナブームの裏で“本当にあったヤバい話”…入れ墨の客に注意した結果

文=織田淳太郎/ノンフィクション作家
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「お客様、入れ墨の方はご入浴できません」

「え?」

 タトゥーの若者は、目を丸くした。

「ダメなんですか?」

「即刻出て行っていただきます」

「せめてサウナだけでも1回」

「ダメです」

「でも、入浴料金は?」

「お返しできないことになっています」

 玄関にデカデカと掲げた「入れ墨入浴不可」の報せ。従業員の方は、それをもって強制退店の正当性を主張しているのだろうが、何だか理不尽な処遇のようにも思えた。

「そうですか……」

 2人の若者は、おとなしく服を着始めた。落胆したように脱衣室を出るその後ろ姿を見て気の毒になったことを、今でも覚えている。

本場のサウナーが語る「瞑想こそ本質」

 人里離れたサウナ付き温泉施設は別にして、地域の温泉施設のサウナには、必ずと言っていいほど「主(ぬし)」になりたがる存在が1人や2人はいる。彼らは我が物顔で狭いサウナ室で横になったり、他人の迷惑顧みず、口角泡を飛ばして仲間とおしゃべりしたりする。冒頭で紹介したマナー破りの男性も、「主」になりたがる1人だったのだろう。

 1年ほど前、自宅近所のサウナに行ったときのこと。このときも、仲間らしきサウナ客に、さかんに甲高い声で話しかける中年男性がいた。私が不快に思ったのと同様、他のサウナ客も不快さを感じていたのは、彼らの表情を見れば一目瞭然だった。その中に、1人の外国人サウナ客がいた。彼もまた、迷惑そうな色をその顔に滲ませていた。

 私が一足先にサウナを出て、水風呂に浸っているとき、その外国人サウナーも水風呂に入ってきた。

「大声で話ばかりしていた、さっきの男性」

 彼は驚くほど流暢な日本語で、私に話しかけてきた。

「あの人はサウナに入る資格がありませんね。ああやってマナーを平気で破る人を、私は日本に来てたくさん見てきました。すごく残念に思います」

 聞けば、サウナ発祥の地・フィンランドの出身だという。それだけに、マナーを踏み外しがちな日本人サウナーの姿に遺憾の思いを募らせているのかもしれない。

 彼は言った。

「サウナで汗をかくとは、静かに自分自身と向き合う、いわば瞑想のようなものなんです。サウナは自分と向き合う人たちが、それぞれの瞑想を共有する場でなければならない。単なる健康面だけでなく、そういう精神性を重視するのもサウナの目的なんです。日本のサウナ好きの人たちには、そのへんをよくわかってもらいたいと思っています」

「サ道」の本質が、ここにある。

(文=織田淳太郎/ノンフィクション作家)

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