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不祥事経験者の親方は相撲界史上初?独立した武隈親方の弟子育成術が注目の理由

文=西本亮平/フリーライター
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両国国技館の吊り屋根と土俵(「Wikipedia」より)
両国国技館の吊り屋根と土俵(「Wikipedia」より)

 3月13日より大相撲春場所が始まった。新大関・御嶽海の躍動が期待されるほか、不祥事による処分で幕下まで降格しながら関脇まで番付を上げてきた阿炎の復活など、見どころの多い場所になりそうだ。

 そんな中、武隈親方の独立が注目されている。元大関の豪栄道、と言った方がイメージが湧きやすいだろうか。2月1日付で境川部屋から独立し、武隈部屋を新設した。2020年初場所での引退から2年が経ち、コロナ禍の影響でようやく断髪式を終えたタイミングでの発表だった。

野球賭博への関与で謹慎、大関として全勝優勝も

 すっかり過去の記憶となってしまったが、2010年、角界は野球賭博問題で揺れていた。当時の大関・琴光喜や大嶽親方(元貴闘力)が、この事件を理由に角界を去っている。当時、武隈親方も事件への関与が発覚し、謹慎期間を経て番付降下を経験している。前頭9枚目で勝ち越し、上位と当たる4枚目へと番付を上げたときだった。

 勢いがついていた矢先に起こったこの出来事で自責の念を感じた武隈親方は、引退をほのめかしたそうだ。しかし、力士が持つ社会的影響力を痛感した上で、1場所謹慎からの十両への番付降下を受け入れ、がんばってみようと思ったという。

 そして、降下後の場所で優勝を果たし、再入幕を果たすと、4場所連続で2桁勝利をあげて小結に昇進。その後やや足踏みしたが、関脇に昇進後は14場所連続でその座を守り、大関昇進を果たしている。

 大関在位は33場所、在位時の成績は260勝194敗41休。2016年秋場所には全勝優勝を果たしているが、大関での負け越しも10回(途中休場含む)と波のあるタイプだった。ただし全休は一度もなく、大関の責務を全うしたといっていいだろう。

弟子育成に生きる、武隈親方の2つの武器

 武隈親方の経歴に触れる中で、これから弟子を育成する上で武器になり得るものが2つある。「不祥事による番付降下」と「連続14場所の関脇在位」である。

 種類や内容こそ違えど、いまだ角界は不祥事の話題が絶えない。親方の管理責任が問われるシーンも多いが、「現役時代に不祥事を経験している親方」はおそらく初めてのケースである。

 文字面だけを見ると、不名誉に思えるかもしれない。一方で、自身が不祥事を経験しているということは、弟子を育成する上で、かける言葉の重みが変わってくるという見方もできる。

 机上の空論を述べるのではなく、経験から伝えられることで、若手力士たちは気を引き締めることができるだろう。親方であれば、誰もが少なからず土俵上の苦労は経験しているだろうが、「土俵以外の苦労を知っている」というのが、弟子の品格形成に寄与すると同時に、今の角界に光をもたらすことになる。

 そして、長い関脇在位経験、それを乗り越えた経験というのも、また武隈親方の力になると考える。より詳しく記すと、関脇在位経験だけで言えば、武隈親方よりも御嶽海(現大関)、浅香山親方(元大関・魁皇)など、より長い力士は存在した。ただ、連続という条件になると、歴代1位は武隈親方である。

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