大江戸温泉物語の社長に就いた橋本氏は、07年から全国の温泉旅館のM&A(合併・買収)を開始した。東京お台場の土地は東京都から借りているので、契約が満了になれば更地にして返却しなければならない。それに備えて全国の温泉旅館の買収に乗り出した。
10年、栃木県日光市の有名温泉旅館「鬼怒川観光ホテル」を買収。同年には、香川県丸亀市でテーブルマーク(旧加ト吉)などが運営していた四国最大規模のテーマパーク「ニューレオマワールド」を手に入れた。レオマワールド内のホテル「レオマの森」、天然温泉「森の湯」の経営権もテーブルマークから取得した。
相次ぐ買収で大江戸温泉は全国29カ所で温泉旅館や温浴施設を運営するまでになった。そこで転売する道を選んだ。ベインキャピタルが15年3月、大江戸温泉を買収した。橋本氏と一族から全株式を取得。橋本一族は経営から手を引いた。
買収額は負債を含めて約500億円。大江戸温泉は台湾や韓国などアジアからの客が増え、業績は伸びていた。ベインが持つ外国人向けの販売促進策のノウハウを活用して、訪日外国人をテコに成長を目指す。ベインは11年に買収した外食大手すかいらーくの経営を立て直すなど、チェーン店企業の再生に実績がある。
ベインは大江戸温泉の株式上場を想定していた。だが、新型コロナの感染拡大で計画は頓挫。コロナ禍でインバウンド需要が蒸発したからだ。大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツの決算公告によると、21年2月期の売上高は161億円。コロナ前の20年2月期の381億円から激減した。最終損益は23億円の赤字から107億円の赤字へと赤字幅は拡大。累積赤字は189億円に膨れ上がった。
22年2月期の財務内容は一段と悪化していると思われる。これがベインが売却を決断した理由だが、買い手のローンスターはいかにして、インバウンドが消えた大江戸温泉を立て直すのか。稼ぎ頭だった「東京お台場 大江戸温泉物語」は営業を終了している。ベインの手腕が問われることになる。
(文=Business Journal編集部)