サワイGHDが小林化工の全工場を譲り受ける
サワイGHDはオリックスの子会社、小林化工の全工場を譲り受ける。サワイGHDの子会社のトラストファーマテック(大阪市)が22年3月末までに小林化工が持つ福井県内の5つの生産拠点や物流拠点と、600人の従業員のうち製造部門などの500人を引き継ぐ。小林化工の既存の製品は引き継がない。新しい会社は23年4月に出荷を開始する予定だ。
小林化工は20年12月、水虫などの治療薬に睡眠剤が混入。健康被害が発生した。服用した245人から健康被害の報告があり、2人が死亡した。福井県から21年2月9日、製薬会社としては過去最長となる116日間の業務停止と業務改善命令を受けた。その後、医薬品の承認申請書類の虚偽記載なども明らかにになり同年4月、厚労省から12製品の承認取り消しと業務改善命令を受けた。
小林化工は自力再建を断念。工場の譲渡金を原資に今後、被害者への補償や、流通するすべての自社製品の自主回収を行う。補償は大半が終わっているとしており、今後、清算・廃業に向かう。
今回の取引はサワイ側のメリットが大きい。小林化工という会社そのものを買収したわけではないから、製品の供給責任を引き継がなくて済む。工場だけ手に入れる道を選んだのはこのためだ。
サワイGHDは31年3月期に年間230億錠の生産能力の達成と20%以上の販売シェアを長期目標に掲げる。21年3月期の生産能力は年間155億錠でシェアは15.7%。この目標に向け、第二九州工場(福岡県飯塚市)に405億円を投じて新しい製造棟を建設する。新工場の生産能力は30億錠。工場ができあがって出荷が始まるのは24年4月からだ。
小林化工の工場に目をつけたのは、第二九州工場の稼働開始までのブランクを埋めるためだ。福井県の5つの工場の生産能力は、第二九州工場で計画している自社工場と同じ年間30億錠。2つ合わせると、60億錠増え、生産能力は215億錠に拡大する。目標とする230億錠にあと一歩だ。
小林化工の工場の取得額は公表していないが、推定で100億円程度と見られている。建設中の自社工場より300億円も低く抑えられる。サワイGHDが飛びついた理由は、時間を買い、投資額のセーブをするのが目的だった。
ジェネリック、供給停滞が長引く
ジェネリックの供給混乱が長期化している。2020年以降に明らかになった品質不正や生産トラブルが発端となった。異物混入で死者を出した小林化工、不適切な手順で生産していた日医工や長生堂製薬(徳島市・非上場)などが21年に、業務停止命令を受けた。