なお、「繰り下げようと思ったけどお金が必要に」という場合は、5年前まで遡って、その間受け取れるはずだった年金を一括受給することもできるので安心を。
長く働く人はiDeCoへの加入も延びる
5月からは、iDeCoに加入できる年齢も、これまでの60歳から65歳に延長される。ただし、対象となるのは、60歳以降も厚生年金に加入していて働いている人と、国民年金の任意加入被保険者(60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たしていない場合や、納付期間が40年に満たず満額受給できない場合に、60歳以降も国民年金に加入すること)。誰でも65歳まで加入できるわけではない。
とはいえ、会社員の場合、60歳以降も職場に残ることが増えているので、厚生年金に加入できているなら対象者はかなり増えるのではないか。
なお、厚生年金に加入できる人自体が拡大する方向にある。週に20時間以上働き、収入が月額8.8万円以上等の条件を満たせば、パート・アルバイトでも社会保険に加入することになる「適用拡大」が始まっているが、現状では従業員501人以上の企業が対象だ。これが、2022年10月から従業員数101人以上の企業に変わる。2024年には、51人以上の企業まで広がる予定だ。
積極的に働く人が増えれば、厚生年金加入者も増加する。パートであっても長く勤めれば、iDeCoで私的年金を積み上げられる期間も増えるわけだ。
ひと口に言えば長く働く人にメリットを、という改正
国が進めている年金改正は、つまりは高齢化社会に即したものといえるだろう。多くの現役世代は60歳で定年を迎えたとしても、年金受給までまだ5年もある。高年齢者雇用安定法により65歳までは職場で働き続けられる環境が整っているし、2021年の改正により70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務とされた。現役時代と同じ企業に勤め続けるだけでなく、先に書いたようにパートやアルバイトなどでがっつり働いて社会保険に加入し、その恩恵を受けることも可能だ。
よほど資産を積み上げた人でも、ただ切り崩すだけの生活が続くのは不安なものだ。わずかでも毎月決まった収入が得られる方がいいし、社会とのつながりを保つこともできる。働き方の選択もいろいろある。これまでのスキルを活かす仕事だけでなく、新しい職場で改めて学ぶこともあるだろう。定年後もなるべく長く働いて将来の年金額を増やし、年金を受け取り始める時期を遅らせる繰り下げで、さらに増やす。それが長生きリスクに備えることになりますよ、というのが、今後も続いていく年金の方向性だ。
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