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華潤麒麟は華潤ブランドの主力製品であるミネラルウォーター「セボン」は好調だが、キリンブランドの紅茶飲料「午後の紅茶」やコーヒー「FIRE(ファィア)」などが伸び悩んだ。中国は人口が多く有望市場とされているが、飲料事業は現地企業だけでなく米コカ・コーラや台湾の康師傳などかひしめき合う激戦区だ。キリンブランドの浸透は容易ではなかった。
合弁事業が好調のうちに持ち分を売却して、売却益をクラフトビールなど成長が期待される分野に振り向けることにした。11年、ブラジルのビール大手を買収したが業績の低迷が続き、17年に売却して撤退した。オーストラリアのチーズ、同国の飲料など不採算事業を相次いで売却してきた。そして今年、ミャンマーのビール、中国の清涼飲料からも撤退する。海外事業はことごとく失敗したとの厳しい指摘がある。
クラフトビールを成長の柱に据える
国内市場は成熟化し、これ以上の成長は望めず、海外に活路を求めるしかない。海外の中核事業の組み替えが急務だ。21年12月、豪クラフトビール専業のファーメンタム・グループを、22年1月にはクラフトビールの米ベルズ・ブルワリーを立て続けに買収した。買収額はともに400億円程度。米国では20年、クラフト大手のニュー・ベルジャン・ブルーイングを買っており、クラフトビールの買収が続いている。
多様な味が楽しめるクラフトビールは唯一の成長市場になっている。キリンHDの海外のクラフト販売はキリンHDの世界でのビール類売り上げ数量の1割にようやく達した。世界でビール市場が縮小するなか、高付加価値のクラフトビールは数少ない成長領域とキリンは見ており、米国と豪州でクラフトビールの販売に注力する。
国内ビール大手4社は国内の不振を海外で補う構図で共通している。キリンHDは21年12月期決算(国際会計基準)で唯一、減益だったが、ミャンマー事業の撤退に伴う減損が響いた。売上収益は前期比1%減の1兆8215億円、純利益は17%減の597億円だった。
キリンHDはアサヒグループホールディングス(GHD)に先駆け、海外を開拓してきた。一方、アサヒは欧州と豪州の巨額M&Aでプレミアムビール会社などを手に入れ、21年12月期の国際事業の事業利益が全体の74%を占めるまでとなり、海外事業で明暗を分けた。キリンHDはアサヒに海外事業で大きく水を開けられた。キリンHDは海外事業をいかに立て直すのか。クラフトビール頼みでは心もとない。
かつて国内ビール市場の6割を占め「ビール業界のガリバー」と評されたキリンHDは、どこへ向かおうとしているのだろうか。
(文=Business Journal編集部)