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がん治療“第四の柱”免疫療法「NKT細胞標的治療」が注目

文=Business Journal編集部
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理研免疫再生医学のHPより

 新型コロナウイルスとの闘いは、いまだ終焉の兆しが見えないが、そんななかでも歩みを止めてはならないのは、がん克服への挑戦だ。日本人では2人に1人が、生涯のうちにがんに罹患する。根治や寛解を目指せるケースも増えたものの、なお3人に1人ががんで命を落とす。その多くは、発見時に進行していたり、再発・転移をしていたりするケースだ。

 一方で、がん治療は日進月歩で、とりわけ、従来からある三大療法(手術、放射線、薬物)と並び、“第四の柱”ともされる「免疫療法」は注目を集めている。その実力は、いかほどか。「RIKEN-NKT(TM) (NKT細胞標的治療)」を受けたIさん(40代、女性)のケースを見てみよう。

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 早期の大腸がん発覚で事なきを得たIさんだったが、3年後に再発したのに加え、「腹膜播種」と呼ばれる転移も起こしていた。これは、がん細胞が腹腔(腹部の空間)内に、まるで種子をまいた時のように散らばっている状態で、目に見える箇所を取り除いても、見えない播種が再び成長してくるのはほぼ免れられないとされる。

 実際に、切除から2カ月後に再々発が発覚した。そこで、Iさんが選択した「RIKEN-NKT(TM)」は免疫療法の1つで、理化学研究所と国立大学が共同で研究した「NKT細胞標的治療」をベースにして理研発ベンチャーである株式会社理研免疫再生医学が独自に開発したものだ。Iさんは、標準治療である抗がん剤も併用したが、主治医から、抗がん剤治療はがんを治すものではなく、がんの成長を抑えて「延命を図るのが目的」だと告げられていた。

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 ところが、「RIKEN-NKT(TM)」の開始から2カ月後のCT検査でがんの縮小傾向が見られ、さらに2カ月するともっと小さくなり、半年後の3回目の検査ではがんが消失したまま、その状態を維持している。可能性として、抗がん剤が奏功したということは否定できないが、一般には薬だけの効果とは考えにくく、免疫療法の恩恵が深く関与していると見られている。

 再々発で呆然自失状態だったIさんのために、この治療を探したのは夫だ。がんは元々は自己の細胞であるため「免疫療法」は有望だと考え、なかでも、きちんと論文があったり、臨床試験が実施されたり、いわゆるエビデンス(医学的根拠)のある治療を探した。「治療の選択肢が増えたのは朗報で、結果に満足している」と語る。

がん免疫療法の実用化の歴史

 免疫療法は、がんの本質に迫り、根治を目指せる治療だ。もともと我々の体には、免疫細胞が備わっている。実は、我々の体内では日々多数のがん細胞が発生しているが、多くの人ががんを発症しないで済むのは、免疫細胞がそれを退治しているからだ。一方で、がん細胞には、免疫機構をたくみに回避しようという仕組みがある。そこで、免疫細胞を、がん細胞を攻撃するように仕向けようという「免疫療法」は、理に適った治療となる。

 免疫のメカニズムと共に、がん免疫療法の実用化の歴史を簡単に振り返ってみよう。生体の免疫を担うのは、血液中の免疫細胞(リンパ球)である。免疫機構には、大きく「自然免疫」「獲得免疫」の2つがある。自然免疫は、生まれながらに体に備わった仕組みで、体内への異物(病原体)の侵入を察知すると、免疫細胞のうち「ナチュラルキラー(NK)細胞」が発動して、これを攻撃する。即効性はあるものの、攻撃する力には限界がある。そこで、「獲得免疫」の出番となる。病原体の表面にある抗原の情報は、抗原提示細胞(樹状細胞)を通じて免疫機構に伝えられ、T細胞によって「抗体」がつくられる。この抗体が、抗原を目印として病原体の排除に向かうのだ。

 まず、1980年代に開発された免疫療法は、「活性化リンパ球療法」である。NK細胞やT細胞を体外で数10万から100万倍近くまで増やし活性化した状態で、体内に戻す。しかし、たとえてみれば、プール全体(全血液)にコップ1杯の水(活性化リンパ球)を入れるような治療であり、しかも免疫細胞の寿命は短いことから、定期的に繰り返さなければ、十分な効果を得ることは難しい。その後も、樹状細胞を増やして監視を強化する治療なども開発されたが、効果は限定的だ。

 こうした経緯から、何となく胡散臭いイメージのあったがん免疫療法に脚光が当たったのは、2018年のノーベル生理学・医学賞の受賞対象となったことである。京都大学の本庶佑氏らが開発したオプジーボという薬は、免疫機構にブレーキをかけているがん細胞による「免疫チェックポイント」を外す効果があり、大きな前進である。しかしながら、ブレーキを外すだけでは、十分な効果が得られないことが少なくない。

「NKT細胞標的治療」とは

 今なお玉石混淆で、有象無象の治療が跋扈しているのが、がん免疫療法の世界である。そんななかで、Iさんの受けた「RIKEN-NKT(TM)」は、ヒトへの臨床試験で科学的エビデンスを有する免疫療法「NKT細胞標的治療」を技術的基礎に置いたものである。

 NKT細胞は1986年、千葉大学の免疫学の教授であった谷口克氏が発見した、自らがんを攻撃する上に、NK細胞とT細胞を同時に活性化することができる免疫細胞で、がん治療の要となる。オプジーボと同様に免疫チェックポイントの制御も行い、長期免疫記憶を持つ。血液中に占める割合は非常に少ないが、傷害を受けた部位に集まって活性化される。すると、体内のさまざまな免疫細胞の活性化を連鎖的に引き起こし、がん細胞を攻撃する。

 自家免疫細胞治療と呼ばれるもので、採取した自己の血液から単離した後に分化・誘導して作製した特殊な免疫細胞を、NKT細胞を活性化する機能を持った細胞に調製し、いわば、オーダーメイドの医薬品を作製する。これを皮下注射もしくは点滴や所属リンパ節近傍に皮下注射することで患者の体内に、一定期間をあけて、4回投与する。

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「NKT細胞標的治療は」試験的な治療を試す国の制度に基づき、治療の有効性と安全性を評価するため、国立大学医学部附属病院において、「先進医療B」として臨床試験が実施された経緯がある。「RIKEN-NKT(TM)」は再生医療のため保険適用には至っていないが、都内を中心に、17(2022年4月現在)の医療機関で、この治療を受けることができる。血液採取や投与を含め、外来で受けられる治療だ。

 気になる治療費用は、医療機関ごとに多少差があるが、全額自己負担で、おおむね一式で約353万円(税込み)前後である。初診、事前検査、再診、成分採血、細胞培養費、技術提供料、投与、免疫機能検査などの負担が含まれる。原価の積み上げから算定された費用であり、決して法外な額というわけではない。

 標準治療で受ける薬物療法(抗がん剤)や放射線療法に比べると、副作用が格段に軽く、肉体的な負担が少ないことは大きな利点となる。一部で、一時的な軽い発熱やそれに伴う倦怠感などが生じることがあるが、抗がん剤で起こる骨髄抑制、脱毛、吐き気、神経障害などの副作用と違い、極めて軽度の副反応だ。前出のIさんが治療を選択した際も、決め手の1つとなった。

理研免疫再生医学の取り組み

 患者から採取した血液から、投与する治療薬(再生医療等製品)の調製や提供を担うのは、理研発ベンチャーの株式会社理研免疫再生医学(本社・千代田区)(http://www.riken-irm.com TEL:03-5226-5880)である。患者からの相談や、医療機関のサポートなども行っている。がん治療“第四の柱”免疫療法「NKT細胞標的治療」が注目の画像5

 2016年にこの治療が医療として実施されるようになって、すでに280件以上が行われている。そのうち90件近くを手掛けているのが、東京シーサイドクリニック(東京都千代田区)である。院長の中川敬一氏は、この治療を導入した理由について、「自分の免疫力を高める治療は、自院が掲げる『予防医療』にも合致した。臨床研究が積まれていることで、安心感がある」と語る。中川氏は千葉大学の出身で、学生時代に講義を受けた谷口氏の成果が実用化されたことへの感慨もあるという。

 同院で2020年から実施した「RIKEN-NKT(TM)」41件の検討では、がん種や併用された抗がん剤の種類もさまざまだが、ステージ4の人が35人と大半を占めた。それでも、全体の約40%で、腫瘍マーカーの値が下がったり、腫瘍にサイズが縮小したりといった効果が見られた。

 国立大学での研究では、治療効果が出ている人は、T細胞とNK細胞を活性化するインターフェロンの値が高くなるなどのデータも出ている。中川氏は、「今後、実施中の複数の医療機関が治療データを持ち寄り、さらに有効性を検証していきたい」と抱負を語る。免疫療法の効果には個人差が大きく、治療の開始前に効果がある人を見極めることは困難である。一方で、血液中のリンパ球数や培養される樹状細胞の数は、個人によりばらつきがあり、工業製品である薬のように品質を標準化しにくいため、保険診療になるための壁は厚い。これを逆手に取れば、標準治療の狭さを補う治療であるとも言える。

「NKT細胞標的治療」は、がんの種類やステージを問わず実施できる治療ではあるが、実際には、患者の全身状態によって治療への反応性や効果には差が生じてくる。理研免疫再生医学の代表取締役である徳岡治衛氏は、「今は病状が進んだ患者様が多いのですが、本来は、標準治療を受けている場合でも、早い段階での実施をお勧めします。そうすれば、一層の効果が期待出来ると考えています」と語る。免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ)や標準治療と併用すれば、効果を補完し合える可能性もある。

 がんとの闘いは総力戦であり、“情報戦”が制するといって過言ではないほど、情報の差が効いてくる。治療の選択肢が増えるなかで、よりエビデンスのある治療にたどりつけることが、身を助けることにつながる。たとえ、現時点で効果が十分とは言えない治療であっても、より良い治療を待つ時間を稼ぐためにも、必要となってくる。

(文=Business Journal編集部)

※本記事はPR記事です

 

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