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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

GWの宿選び、ココにも注意!レジオネラ菌に感染して重症化や死亡例も

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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レジオネラ菌に感染して重症化や死亡例も
温泉も衛生状態の確認が必要(「Getty Images」より)

今年3月、兵庫県の有馬温泉にある「かんぽの宿」の入浴施設を利用した70代の男性2人がレジオネラ菌に感染し、うち1人が死亡。宿は営業停止処分を受けた。日本におけるレジオネラ菌の感染は毎年のように発生しており、重症例や死亡例もあり、レジオネラ菌は身近に潜む恐怖ともいえる。

レジオネラ菌は自然界の河川、湖水、温泉や土壌などに生息する細菌で、アメーバなど他の生物の細胞内に寄生し、増殖する。また、自然界だけでなく、ビルの屋上などにある冷却棟や温泉施設のジャグジー、加湿器など、水があるさまざまな環境で、消毒や水の入れ替えを怠るとレジオネラ菌が増殖しやすくなる。さらに水温が2543の場合、レジオネラ菌にとって生息しやすい環境となるため、入浴施設での発生件数が多い傾向にある。

前述のかんぽの宿の例では、増殖したレジオネラ菌がエアロゾルに乗って人の肺に吸い込まれ感染したとみられるが、レジオネラ菌の感染経路はエアロゾルだけではない。温泉浴槽内や河川での遊泳などの際に汚染された水を吸引・誤嚥したことによる感染事例や、レジオネラ菌に汚染された腐葉土の粉塵を吸い込んだことが原因と推定される感染事例の報告もある。

レジオネラ菌に感染し起きる症状は「レジオネラ症」と呼ばれ、その潜伏期間は210日である。通常、細菌などの異物を含むエアロゾルを吸入し、異物が肺胞上皮に入り込むと白血球の一つである肺胞マクロファージという食細胞が異物を食べ、排除する。この免疫システムによって肺が守られているが、レジオネラ菌は細胞内寄生細菌であるため、死なずにそのまま肺胞マクロファージの中で増殖し、レジオネラ肺炎を起こす。

レジオネラ肺炎は、全身の倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛など風邪のような症状に始まるが、適切な治療が行われない場合、その進行は早く、咳や38以上の高熱、呼吸困難、意識レベルの低下、幻覚、手足が震えるなどの中枢神経系の症状や下痢などの症状が現れ、1週間程度で死に至るといわれる。しかし、レジオネラ菌に感染したすべての人がレジオネラ肺炎を発症するわけではなく、レジオネラ菌感染によって発症するポンティアック熱では、発熱、悪寒、筋肉痛などの症状が現れるものの、その症状は一過性で、自然治癒することも多い。

レジオネラ症の治療と予防法

 レジオネラ肺炎はレジオネラ菌による細菌感染症であり、抗菌薬による治療が不可欠である。抗菌薬はマクロライド系、ニューキノロン系やリファンピシン等などを使用する。レジオネラ菌の感染が疑われる場合には尿中抗原による迅速診断を行い、適切な抗菌剤を投与することで死亡率を下げることができる。一方のポンティアック熱の場合は、抗菌薬の投与が必須ではなく、数日で自然治癒するケースも多い。

 レジオネラ菌は60度・5分間で殺菌されるため、加熱式加湿器ではリスクが低いが、超音波式加湿器の使用時は注意が必要である。毎日、水の入れ替えと容器の洗浄を行うことでレジオネラ菌の増殖を防ぐことができるが、洗浄せずに給水を続けると、容器内で菌が増殖して空気中に放出される恐れがある。

また、追い炊き機能付き風呂や24 時間風呂など循環式浴槽の場合は、定期的な洗浄を行い、レジオネラ菌が増殖しやすい「ぬめりや汚れ」をなくすことが重要である。ゴールデンウィークを前に旅行を計画している人も多いだろうが、宿泊施設や入浴施設の衛生管理を事前にチェックすることも重要なポイントだろう。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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