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世界初、レッカー車のDXを実現…進化するレッカー車と意外なレッカー業界の現状

文=二階堂運人/物流ライター
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ヤマグチレッカーが製作した、日本最大の75t大型レッカー車

 ところで、現在のレッカー業界を取り巻く環境は、どのような状況だろうか。

 一般的な認識では、若い世代をはじめとする“クルマ離れ”で交通量が減り、車両の性能も向上しているので、車両トラブルは少なくなっているのではないか、と思われがちだ。しかし、「レッカー出動回数は、以前よりもむしろ増えています」と山口氏は言う。

 現在の車両は、昔の車両に比べ壊れやすい。いや、壊れやすいというより止まりやすくなっているという。意外な事実だ。

 現在の自動車は、複数のマイコン(超小型コンピューター)で制御されている。最大で100個以上のマイコンを搭載する自動車もある。そのうち一つでも異常が出れば、クルマは止まってしまう。一旦、車両に故障が発生すると、原因特定に時間がかかるため、その場での修理が難しく、修理工場などにレッカー車で運ばざるを得ない。

 また、損害保険の付帯サービスとしてロードサービスが一般的なものとなり、レッカー車を気軽に手配できようになったことで、レッカー車の出動依頼が増加するようになった。

 このような理由から、レッカー車はまだまだ不足しているのが現状だ。

未来の笑顔のためには、国の整備が急務

 次に、レッカー・ロードサービス業は、国としてどのような位置づけにあるのか。

 実は、レッカー・ロードサービス業は、業種として確立されておらず、『その他のサービス業』として分類されているのだ。これは一体どういうことなのか。

 昨今、地震や台風、異常気象による大雨や大雪などの災害により、交通麻痺が起こることがしばしばある。大雪の中で車両が身動きを取れず、ドライバーが長い間車内に取り残された事案など記憶に新しいだろう。

 これは当時の法律の縛りで、公道上の放置車両をすぐに移動させることができなかったため、救急車や消防車、自衛隊などの救護車両が通行できずに招いた事案であった。 

 なぜ、スムーズなレッカー作業がされなかったのか。それは、レッカー・ロードサービス全体を管轄する省庁がないことが最大の要因だ。管轄省庁がなければ、自治体の災害復旧体制との連携もうまくいかず、必要な法整備も進まない。

 このような状況で、レッカー・ロードサービス業が、いまだに「その他のサービス業」に分類されている現状を憂慮して山口氏は、レッカー業界黎明期から関係者と共に国へ法整備等を訴えてきた。

「災害時の救護体制など、業界がスムーズに連携するためにも、国の統制が必要です。レッカー作業をスムーズに行うことができれば、救急車やレスキュー車が、現場まで早く行くことができ、今まで助からなかった命が助かるかもしれません。日本は今、大規模な災害が増えています。一人でも多く、尊い命を救うためにも、国にはまず法整備を進めていただきたいです」(山口氏)

「災害対策基本法」は改正されてきたが、レッカー・ロードサービス業界にとっては、まだ課題が残る。何よりも急務なのが、管轄省庁がつくことだ。国による認定登録業者化、教育・資格制度など、法を整備することにより、より迅速で安心なサービスが提供できるようになる。

 社会活動を円滑にし、かけがえのない命を守るために、レッカー・ロードサービス業は、「道路啓開(けいかい)業」を担う大きな存在であることを、我々も認識すべきだ。
※啓開(けいかい)…障害物、危険物などを取り除いて進行を可能にすること。

 山口氏率いるヤマグチレッカーをはじめ、レッカー業界の絶え間ない努力により、迅速で安心・安全なレッカー活動の土台は揃っている。あとは法整備のみである。

 また、山口氏は近年、インフラ整備で交通量が増大している東南アジアにも注目している。特にインドネシアからレッカー車の受注が拡大しているという。ヤマグチレッカーは日本で培った「安心・安全」を、東南アジアにも広げていく。

 ヤマグチレッカーの経営理念の一節にある「社会活動の永続的円滑化」の実現のため、そしてレッカー・ロードサービス業界全体の改善に取り組むために、山口氏はこれからも奔走し続ける。

(文=二階堂運人/物流ライター)

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『ジャパントラックショー2022』
「ジャパントラックショー」は、物流・輸送企業150社、5万人を超える来場者が集まる、日本最大のトラック関連総合展示会。2016年からスタートし、3回目の2020年がコロナ禍により中止を余儀なくされたため、今年が4年ぶりの開催となる。今回のテーマは「物流、新時代へ」。最先端技術を搭載した新型トラックや、高い技術力を誇るトレーラー、迫力のある特装車や作業車など、“働くクルマ”が集結する。

●二階堂運人(にかいどう かずと)/物流ライター
建設業・広告業・不動産業を経た後、最大手宅配便会社に勤務。宅配ドライバーとして集配に携わる。宅配業界で得たネットワークをもとに宅配業界の現状、未来を現場の視点から発信し続ける。現在、モノから人に運ぶものを変え、タクシードライバーとしても世間のつぶやきを収集中。運輸、物流の底からの視点で世の中の動向などを伝えている。
ブログhttps://www.naru-naruzo.com/

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