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藤和彦「日本と世界の先を読む」

コメ、生産量が大幅減少で価格高騰の兆候…価格下落から一転、アジア食糧危機も

文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー
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 両国産に代わる肥料の代替調達の取り組みが始まっているが、限界があり、世界の肥料市場での需給逼迫が解消する兆しは見えてこない。肥料価格の上昇は穀物の供給減少に直結することはいうまでもない。米農務省によれば、肥料を相対的に多く使うトウモロコシの今年春の作付け面積は4%減少する見通しだ。コメ輸出大国のタイでは今年も豊作が見込まれているが、前述した肥料コストの高騰が暗い影を投げかけ始めている。

 肥料コストの高騰でコメの生産が大幅に減少するとの懸念が生じている(4月19日付ブルームバーグ)。価格が低く抑えられてきたことから、コメ農家は肥料コストの上昇分を転嫁しずらい。このことが災いして、肥料価格の上昇が招く収穫量の減少は、コメ農家で最も顕著にあらわれ、今後のコメ生産量が激減する可能性が指摘されている。

 国際稲作研究所(IRRI)は「農家が肥料の使用量を減らしていることから、次のシーズンにコメの収穫量が10%減少し、コメ3600万トン、5億人分相当の供給が失われる恐れがある」と予測している。この予測は極めて控えめなものであり、「ウクライナでの戦闘状態が続けば、その影響ははるかに深刻なものになるのが確実だ」という。

アジアの政情不安が懸念

 肥料価格の上昇が続けば、中国、インド、バングラデシュ、インドネシア、ベトナムなどの主要生産国でコメの生産量が大幅に減少し、世界の人口の6割を占めるアジアは本格的な食糧危機に陥るのではないかとの不安が頭をよぎる。

 ロシアとウクライナの小麦の主要輸出先である中東や北アフリカ地域ではすでに主要食料品の価格が急騰しており、人々の我慢は限界に達しつつある。これまでのところ、ウクライナ危機の影響が比較的小さいアジア地域だが、コメ価格が高騰すれば、これまでとはまったく違う展開になる。中東やアフリカ地域と同様、アジアも家計支出の多くを食料品が占める低所得国が多く、コメ価格の高騰に起因する政情不安が起きるのは時間の問題なのかもしれない。

 日本を取り巻くアジアでこのような惨事が起こることを回避するためにも、ロシアとウクライナの間の停戦を一刻も早く実現すべきではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー 

1984年 通商産業省入省
1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)
1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)
1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)
2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)
2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)
2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職

 

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