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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

28nmロジック半導体の逼迫が解消、TSMC熊本工場が無用の長物になる可能性

文=湯之上隆/微細加工研究所所長

 そのようなときに、どこかの国の間抜けな経産省が、「建設用地も準備します、水や電気などのインフラも確保します、設備投資の半分(5000億円)も補助金としてし出します」などと言って熱心に工場誘致を行ったため、「だったら、28nm(22nm)の半導体工場を熊本に建設しましょう」とTSMCが決断したのだろう(TSMCは笑いが止まらないのではないか)。

 ちょっと話が逸れてしまったが、このように世界で不足している半導体はTSMCなどのファンドリーが生産している28nm(22nm)であり、当然ファンドリーの28nm(22nm)の生産ラインは逼迫していると思い込んでいたわけだ。

 ところが、VLSI Research(Tech Insights)のAndrea Lati氏によるSIAウェビナーの発表によれば、「現在は状況が異なる」というのである。事態は変わってしまったのだ。

どこが逼迫し、何が足りないか?

 図3に、Andrea Lati氏が“Semiconductor Market Overview”で発表したスライドのなかの1枚を示す。この図では、各種半導体および形態別の半導体メーカー(IDM、ファンドリー、OSAT)について、Shortage(不足)、Tight(逼迫)、Balanced(丁度いい)、Loose(余裕がある)、Saturated(飽和している)、Glut(過剰)の6段階で評価を行っている。また、図3の中段までは、四半期ごとの評価が書かれており、下段は週ごとの評価が記載されている。

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 まず、Overall(半導体全般)について、2021年1Qと2Qが「Shortage」、2021年3Qが「Balanced」である他は、2020年1Qから2022年2月まで、概ね「Tight」となっている。恐らく、今後も「Tight」な状態が続くと思われる。

 次に、企業形態別の状況において筆者が最も驚いたのがファンドリーで、2020年1Qから2021年2Qまでは、「Shortage」または「Tight」であるが、2021年3Q以降は、「Balanced」「Saturated」「Loose」のいずれかとなっており、逼迫感はないことになっている(ただし細かく見ると、2021年11月12日から12月3日までは「Tight」となっている)。

 このように、2021年3Q以降(部分的に年末に「Tight」であることを除けば)、ファンドリーの逼迫感はなくなっているといえるため、世界的に不足していたと推測される28nm(22nm)の半導体も、その不足は解消されたと思われる。

 そして、この図3から、現在世界で不足または逼迫している半導体は2種類あることがわかる。一つは、DRAMやNANDなどのメモリ、もう一つは、アナログ&パワー半導体である。以下では、まずDRAMやNANDについて詳細を論じる。

データセンタ需要の急拡大がメモリ不足の原因

 DRAMとNANDが逼迫しているのは、コロナの感染拡大によってリモートワークやネットショッピングが急拡大したため、アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどのクラウドメーカーが巨大データセンタへの投資を活発化させたことによると推測している。このデータセンタには高性能サーバをずらりと並べる必要がある。そのサーバには最先端のプロセッサ、DRAM、NANDが必要である。その結果、図4に示したように、2021年12月10日以降、DRAMが「Shortage」、2021年1Q以降、NANDが「Tight」になっている。

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 ただし、DRAMとNANDについては、サムスン、SKハイニックス、マイクロンなどのメモリメーカーが大投資を行っており、いずれ逼迫は解消されると思われる。しかし、アナログ&パワー半導体の逼迫は、簡単に解消できないと思われる。その根拠を以下に示す。

レガシーな車載半導体が不足

 図5に示したように、アナログ&パワー半導体は2020年2Q以降に「Tight」または「Shortage」になっている。これを製造しているのは、IDMと考えられる。というのは、アナログ&パワーと同じ時期に、IDMも「Tight」になっているからである。

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