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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

無音で音楽の授業という奇妙な光景…コロナ禍での教育現場の混乱

文=篠崎靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師
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 文科省は、感染のレベルを3段階に分けています。レベル3は、「感染症対策を講じてもなお感染のリスクが高いことから、行わないようにします」と書かれていますが、レベル2では、「可能な限り感染症対策を行った上で、リスクの低い活動から徐々に実施することを検討します」と、少し判断に困るような表現で書かれています。やっとレベル1となっても、「換気、身体的距離の確保や手洗いなどの感染症対策を行った上で 実施することを検討します」と書かれており、結局どうしたらいいのか、僕が教員でも困ってしまうと思います。

 しかも、文科省が現在公開しているマニュアル『学校における新型コロナウイルス感染症 に関する衛生管理マニュアル ~「学校の新しい生活様式」~ 最新版(2022年4月1日発行)』の音楽に関しては、2年前のもの(2020年9月2日発行)とほとんど変わっていません。新型コロナも変異を繰り返して、2年前とはまったく違う様相を見せていますし、医学的見地による感染症対策も、この2年間で進歩してきたはずです。

 ちなみに現在、オーケストラでは、世界各地で繰り返された実証実験の結果を踏まえ、演奏に当たって飛沫を飛ばさない弦楽器はともかく、学校のリコーダーと同じく息を吹き込む管楽器であっても、飛沫は楽器内や奏者周辺にとどまることがわかっています。クラシック音楽の観客も声を上げるわけではなく、マスク着用で静かに聴いていただいているので、オーケストラ・コンサートでクラスターが発生したとは聞いたことがありません。

 音楽教育の現場でも、冷静かつ合理的な検証を進め、子供たちには基本的な感染症対策を講じながら、のびのびと音楽を学んでほしいと願います。

指揮者の奇妙な練習風景

 想像してみると、音を出さずに鍵盤ハーモニカをカタカタ叩いてみたり、リコーダーを吹く真似をしたり、そんな風景が繰り広げられている音楽の教室は、まるで冗談のようです。しかし、実は指揮者の僕も同じようなことをしていました。

 指揮者が怖い顔をして情熱的に指揮棒を振ったり、笑顔で優しく指揮をしていたとしても、目の前にオーケストラがいなければ奇異な光景です。それでも、スコアを勉強しながら、出てくる音を想像しながら、自然に軽く指揮を振っていることはあります。特に、指揮をするのが難しい曲を勉強している時には、指揮の方法を考えながら、少し手を動かして練習することもあります。そんなときに家人がノックもなしに急に部屋に入ってきたときには、これほど恥ずかしいことはありません。

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5:30更新
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